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腟内フローラを診る時代へ ― 妊活世代に伝えたい腟内環境の大切さ
【IVFなんばクリニック 門上 大祐 先生】

IVFなんばクリニックは、大阪・なんば駅から徒歩圏内にある不妊治療専門施設です。タイミング療法から体外受精・顕微授精、着床前検査(PGT)まで幅広く対応し、社会的卵子凍結や男性不妊治療にも注力している先進的な生殖医療医院です。また、生殖心理・栄養・遺伝のカウンセリングや鍼灸・レーザー、ミトコンウォークなどの統合医療も取り入れ、「妊娠」から「出産・育児」までを見据えたトータルサポートも行っています。
最近、婦人科や不妊治療の現場で注目されている「腟内フローラ」をご存じでしょうか。
私たちの体には多くの細菌が共生しています。この細菌の集まりは「フローラ」と呼ばれ、そのバランスによって健康が保たれています。腟内も同様で、細菌のバランスが崩れる(=腟内フローラが乱れる)と、帯下異常やかゆみなどのトラブルだけでなく、着床が難しくなったり、流産のリスクと関係があることがわかってきました。
近年の研究により、腟内フローラと妊娠の成立、経過との関係が注目され、不妊治療の一環として腟内フローラ検査を導入する医療機関も増えています。
腟内フローラの乱れは自覚症状がないことが多く、検査によって状態を把握することがよりよい健康維持、妊娠のための第一歩といえるでしょう。
今回、実際にこの検査を診療に取り入れているIVFなんばクリニックの門上大祐先生を訪ね、腟内フローラ検査の意味や腟内フローラが乱れている時の治療とケア、日常で気をつけたいポイントなどを具体的に教えていただきました。
腟内フローラの検査をすると約半数の方に乱れがあることがわかります
IVFなんばクリニックでは、2025年6月から初診患者さまを対象に、最初の検査のひとつとして腟内フローラ検査を行っています。
その結果、現在までに検査を受けた約600人のうち、約5割の患者さまに腟内フローラの乱れが見られることがわかってきました。
自覚症状がないケースも多く、腟内フローラが乱れているという検査結果に驚かれる方も少なくありません。
乱れる要因としては、年齢、ホルモン変化、抗菌薬の過剰使用などが影響していると考えられています。
卵巣機能の異常により月経周期に問題がある場合、エストロゲン分泌が不安定になりやすく、その結果、腟内フローラにも影響が出やすい傾向があります。
腟内と子宮内はリンクしています
腟内フローラの乱れ=子宮内フローラの乱れとは限りませんが、腟と子宮はつながっているため、バランスが相互に影響すると考えられています。
そのため、腟内フローラが乱れていると子宮内膜炎のリスクが高まる可能性があります。子宮内膜炎は、着床を妨げたり、流産の原因にもなりますから、妊娠を希望する方にとって見過ごせない問題です。
そのため、腟内フローラ検査は子宮内の状態を推測するスクリーニングとしての有用性が高いと考えています。

検査で見える「乳酸菌のチカラ」
腟内の環境を守るためには、乳酸菌の中でもラクトバチルス属が重要です。ただ、ラクトバチルス属ならどれでもいいわけではなく、その種類によって腟内での働きも変わってきます。例えば、ラクトバチルス属クリスパータスは着床環境の維持に大切であると言われています。
逆に、ラクトバチルス属イナーズが多いと、着床率が低くなるとの研究結果があります。
良いラクトバチルス属が多いほど腟内環境が良く、腟症や腟炎を防ぎ、妊娠環境を守るといえるでしょう。
検査で状態を確認し、適切なラクトバチルス属を含むプロバイオティクス(有益な作用をもたらす生きた乳酸菌)で治療、または予防をしていくことが大切です。
腟内フローラのケア
実際にどう整える?
検査の結果が良くなかった場合、まず抗菌薬を用いて腟内から良くない菌を除きます。この時、抗菌薬は悪い菌だけでなく良い菌も一緒に除いてしまいますから、抗菌薬で腟内をいったんリセットした後、プロバイオティクスを用いて良いラクトバチルス属を定着させ、良い腟内環境を作り直します。
当院での治療期間は、抗菌薬を1週間、その後、プロバイオティクスを1週間ほど使用します。合計2週間程度で腟内環境が整えられると考えています。
ここで使用するプロバイオティクスは、医療機関から処方されるもので、市販の乳酸菌サプリメントとは異なり、腟内で効果を発揮する特定のラクトバチルス属が含まれています。先ほど説明したクリスパータスなど、腟内環境に適したラクトバチルス属を届けることで、より確実に環境を整えることができます。
治療後、再度検査をして確認することもできますが、基本的には治療によって環境が改善されるため、その後は日常生活でのケアに注意しながら、良い状態を維持していくことが大切になります。
良い環境を保つために 「やりすぎない」日常ケア
良い環境を保つためには、日常生活での「やりすぎないケア」がポイントです。必要以上に洗浄したり、長期間のタンポンの使用によって、良い環境になった腟内が元に戻ってしまうことがあります。
よく「乳酸菌のサプリメントを飲んでいます」という声を聞きますが、口から摂取した乳酸菌が腟まで届く確率はそれほど高くありません。腸内環境など全身の健康には良いと考えられますが、腟内フローラを直接整える効果はあまり期待できません。
また、腟には腟内の環境を守るための自浄作用があります。ラクトバチルス属などの善玉菌が、腟内でグリコーゲン(ブドウ糖がたくさんつながったもの)を分解して乳酸を作り出しています。これによって、腟内は酸性に保たれ、悪玉菌や病原菌の増殖を防ぎ、感染症から体を守っているのです。
ラクトバチルス属が減少し、この自浄作用を壊してしまう要因となるのが、デリケートゾーン用の石鹸やビデ洗浄による洗いすぎ、抗菌薬の使いすぎ、タンポンなど腟内に留置して使用する月経アイテムの長期間使用などです。もちろん抗菌薬を用いて治療しなければならない病気やケガもありますから、使いすぎないよう、注意が大切です。
その他にもストレスや睡眠不足、タバコなども要因となる可能性があります。
これらのことから、妊活・不妊治療をしている方だけでなく、すべての女性にとって、日常のケアが大切といえます。
検査の流れと患者さまの反応
私たちのクリニックでは、スクリーニング検査として初診患者さまを対象に腟内フローラ検査(保険適用外検査)を実施しています。採取は、綿棒で腟壁をこすりますが、痛みは少なく、体への負担が少ない検査です。分析には、カネカ腟内フローラ分析サービス(VAGINAL FLORA分析サービス)を利用しています。検査から約1週間で結果をお渡しし、クリニックから説明をしています。
最初にお話したように、約5割の方に腟内フローラの乱れが見つかります。もともと「不妊」や「妊娠がなかなかできない」ということから通院を開始するため、一般的な割合からすれば高い傾向になるとは考えていましたが、多くても4割ほどを予想していたため、この結果に私も驚いています。
また、腟内フローラに乱れがあるという結果に患者さまも驚くことが多く、理由として自覚症状がないことがあり、「乱れているなんて思いもしなかった」という声と同時に「最初にわかって良かった」という声も多いです。
着床については未解明な部分はあるものの、胚の質に加えて子宮内や体内の状態が関与することが分かっています。 そのため、良好な着床環境を整えることは、妊娠を目指すうえで重要な要素のひとつと考えられます。着床から妊娠継続の過程は、自然な妊娠でも不妊治療(タイミング、人工授精、体外受精)で授かっても全て同じです。治療を進めてから「これは、フローラの問題かな?」と改めて検査をするよりも、事前に腟内フローラから着床環境を整えるアプローチが重要だと考えています。

見えないリスクを見える化するメリット
治療開始前に腟内環境を整えることができるメリットは、着床に関することだけではありません。妊娠後、流産や早産のリスクを軽減することが期待されています。ようやく授かった命を危険に晒すことにつなげないためにも、腟内環境を良くしておくことが大切なのです。というのも流産した時に検査をすると、腟内フローラが乱れているケースが多く見られるからです。
妊娠後も順調であるために、母体が健康であることに加え、腟内環境が整っていることも重要です。
腟内環境を身体的負担が少ない方法で確認し、異常があれば早期に対策できることが腟内フローラ検査の大きなメリットです。
検査結果は約1週間で出ますので、気になる方はぜひ医療機関でご相談ください。

プレコンセプションケアとしての腟内フローラ検査
腟内フローラ検査は、不妊治療を始めてからだけでなく、「これから妊活を考えよう」という段階でも大きな意味を持ちます。
プレコンセプションケアとは、妊娠前から心身の健康を整えておくことです。その一環として腟内環境をチェックし、必要があれば早めに整えておくことで、より良いコンディションで妊活をスタートできると考えます。「もしかしたら、腟内環境を整えることで不妊治療を必要とせずに、自然妊娠できるかもしれない」 そんな可能性もゼロではありません。実際、検査で問題が見つかり、2週間程度の治療で環境を整えたことで、スムーズに妊娠に至るケースもあるからです。
妊娠してから「実は腟内フローラが乱れていた」と気づくよりも、妊活を考え始めた時点でチェックしておくことで、将来の流産や早産のリスクを減らせる可能性があります。 将来の妊娠・出産を考えているすべての女性にとって、腟内フローラ検査という選択肢があることをぜひ知って欲しいと考えています。
IVFなんばクリニック
門上 大祐 先生
略歴
- 滋賀医科大学医学部卒業
- 北野病院勤務
- 平成28年
- IVFなんばクリニック勤務
- 平成28年
- IVFなんばクリニック医長
- 平成30年
- IVFなんばクリニック部長
- 令和3年
- IVFなんばクリニック副院長
- 令和5年
- 表参道ARTクリニック院長
- 令和6年
- IVFなんばクリニック副院長
資格
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
日本生殖医学会認定 生殖医療専門医
























