不妊治療の先生に聞いてみた

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OHSSをゼロに抑えた独自の高刺激による採卵で良好胚を作成
多嚢胞性卵巣の方への治療には自信と実績があります。
【北千住ARTクリニック 大野 基晴 先生】

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北千住ARTクリニックが開院したのは2023年6月のこと。

1日の利用者数の多い駅ランキングでも4位を誇る北千住駅から徒歩6分の地の利にあり、順調に患者さんが訪れ、早くも拡張を考えるほどの勢いを感じさせるのが北千住ARTクリニックです。  ただ、伺ってわかるのですが、患者さんが増える理由は、院長・大野先生の物腰の柔らかさと治療における独自性やスキルの高さがあってのこと。そして、いつもエネルギッシュで元気な先生から、自然と勇気や力を与えられたと感じているご夫婦、患者さんも多いことでしょう。

今回は取材を楽しみに、診療終了時間にお邪魔してお話を伺いました。

開院して2年のご様子からさっそくお話を伺いましょう。

先生はいつも元気そうで何よりです。開院して2年、現在のご様子はいかがでしょう?

おかげさまで、すごく順調ですね。

その順調さの要因は、やはり北千住が、1日の駅利用者数で新宿や渋谷などに次いで4番目と、常にトップ10に入ってる駅ということです。 この状況ですと、まだまだ当院を必要とし、ご利用いただける患者さんは多くいると感じています。

今現在、1日に80人から90人が来られるのですが、土日だと110人から140人ぐらいを診させていただいております。それを1人でやっている状況です。

診療は、内診台が2台ですから、1人でそれを回しながら、採卵も移植もしてという形です。

流石に1日が終わる頃にはヘトヘトになってしまいますが、それでも新規の患者さんの待ち期間が2カ月先だったり、3カ月先になってしまっていて申し訳なく思っています。さらに増やせば増やすほど待ち時間が伸びてしまうので、増やし辛いですから、移転を考え始めているところです。

今のクリニック環境では設計上、施設の広さという問題もあるため、常時2人体制にすることができない状況があります。

患者さんのご様子

患者さんご夫婦は、千住、台東区や墨田区といった、東京都内で言うところの下町の人が多いですね。常磐線沿いで行けば我孫子や取手の方が来られたり。東武線沿線だと春日部の方がいらっしゃったりします。 あとは、たまに福島県や栃木県の方、群馬県の方が北千住経由でお仕事に行かれていて、その帰りに寄られる方も結構いらっしゃいます。

年齢的には平均したらおそらく35歳前後だと思います。
高年齢の方も若い方も満遍なくといった感じです。

22歳とかで来られる方もいれば、42、43歳の方もいます。当院は年齢制限をしていないので、48歳の方で治療中の方もいます。本当に満遍なく診させていただいています。

診療内容としては、一般不妊治療が6割、ARTが4割ぐらいかと思って診ていますが、この場ですぐには正確なことはわからないです。

ARTを自費で受診している方はほぼいなくて、いるとしたら年齢制限を越されている方だけになります。

妊娠率は、ART診療で61‌・2%(保険診療での臨床妊娠率)です。ただ、保険適用外で自由診療で受けられる場合には年齢要因や難度も増すため、21・7%と低くなってしまうのが現状です。

独自の診療スタイル
特に多嚢胞性卵巣の方への治療には自信があります

不妊治療、特にARTでは卵巣の中の卵子をいかに育て採卵するかがポイントとなります。そこから、その後に続く胚培養、胚凍結、移植、妊娠へ道が開けるからです。そこで、採卵に向けては調節卵巣刺激を行うのですが、私の場合、生殖医療を学ぶのに高刺激周期を中心に学んで育ってきたので、高刺激法が得意です。

ただ、高刺激法の場合、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)という合併症が起きやすく、卵巣の腫れ、腹水、胸水、そして重症化すると呼吸困難や腎不全などの症状を引き起こす可能性もあります。それに関して、私は大学院の頃にセントマザー産婦人科で学んでいるときに、完全にOHSSを予防できるという新しい方法(採卵直後より3種類の薬剤を5日間処方)を作るのに関わりました。

僕がデータを取りまとめ、後輩が論文を出したのですが、そういう経験もあるため、そのような卵巣過剰刺激症候群にかかりそうな多嚢胞性卵巣の方への治療は得意とするところです。

多嚢胞性卵巣は、若い方にも多くみられる症状です。AMH値も高く、月経周期も不規則になりがちですから症状としてはわかりやすいのですが、妊娠しにくい傾向にあり、排卵障害を起こしやすい傾向にもあり、その場合、自然妊娠は困難になってしまいます。

そのような方に対しては、卵巣刺激を調節して採卵ができるように持っていき、とにかく良好胚を作るようにします。それができれば、ほぼ着床にいたっています。採卵を1回ないし2回、3回と行う可能性もありますが、良好胚さえ作れればほとんどの方が妊娠され、出産に至ります。

同じように、高年齢などで逆にAMH値も少ない方でも、高刺激中心に個々に対応しながら採卵まで持っていき、良好胚を作り胚盤胞まで持っていければ、妊娠して出産まで至ることができます。

ついこの間卒業されましたが、AMH値が0.2とか0.1とかで卵巣年齢がもう本当に46歳以上という32~33歳の方がいらっしゃって、あれこれ試行錯誤しながら最初のうちは上手くいかなかったのですが、最後にこのやり方でやってみて、うまくいって妊娠され、無事に卒業されたのは嬉しかったですね。

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多嚢胞性卵巣の方は、高刺激法でもいける

OHSSの予防さえすれば高刺激法で大丈夫です。

おそらくOHSSになってしまうようなケースでの採卵件数でいくと、もう4桁ぐらいは経験していると思います。

今までに、人生最多の採卵数としてかなりの数を1回で採ったこともありますが、それでも副作用はほぼゼロでした。とはいえ、通常10個から15個の採卵がセオリーで、1個の卵胞の大きさは同じく20‌mm弱ですから、お腹はパンパンになり、本人もお腹のハリなどの重みを感じていらっしゃいましたが、とくに見た目にお腹が出ているなどの感じはないです。その最多のケースで成熟卵子がパンパンでも、やはり半数近くは受精せず、最終的には胚盤胞まで育ち、凍結できた個数は5個か8個だったと思います。

ただ、それぐらい残せれば十分かと思います。

結局その方も妊娠して出産されました。

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2人目、3人目への希望も開けます

今までの診療を通して、良好胚盤胞が17個残せた方がいらっしゃいました。はじめはそんなに保存してどうしようかみたいな話をしていたのですが、その後2人目までを僕が担当して覚えていますが、さらに3人目まで後任が移植成功しているかもしれません。

このように複数の良好胚盤胞を凍結保存できれば、2人目、3人目、さらに4人目と選択肢は広がります。

将来の家族計画にも希望や夢が広がります。
それは、私たち医療者にとっても大変嬉しいことです。 

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患者さんへ

とにかくご夫婦でよく話してほしいですね。自分自身、家庭でどれだけ妻と話せているかちょっと怪しいのですが、不妊治療は夫婦の話です。奥様だけの話ではありませんから、旦那さんだけが先走ってテンション上がってもうめっちゃ子ども欲しいみたいな人ほど奥さんがすごく冷めていたりとか、逆に奥さんがすごく盛り上がっている時に旦那さんがすごく冷めていたりだとか。

それこそ結婚の誓いじゃないですが、いい時も悪い時も共有していただいて、治療方針に関してもお二人でよく話していただいて、その上で最適なものを選んでいただきつつ、我々がサポートさせていただくことがいいんですかね。

日本のハッピーは北千住ARTクリニックからなんて。そんな大それたことは言えないですが、そんな思いでいます。

 

北千住ARTクリニック 大野 基晴 先生

経歴

  • 2010年
  • 東海大学医学部医学科 卒業
  • 2010年
  • 順天堂大学医学部附属順天堂医院 初期研修
  • 2012年
  • 順天堂大学産婦人科学講座 入局
  • 2012年
  • 順天堂大学医学部附属順天堂医院 勤務
  • 2013年
  • 順天堂大学静岡病院 勤務
  • 2014年
  • 社会福祉法人賛育会 賛育会病院 勤務
  • 2015年
  • 越谷市立病院 勤務
  • 2016年
  • 順天堂大学院 博士課程 入学
  • 2016年
  • 順天堂大学医学部附属順天堂医院 勤務
  • 2016年
  • 大島医療センター 勤務
  • 2017年
  • セントマザー産婦人科医院 勤務
  • 2020年
  • 順天堂大学院 博士課程 修了
  • 2020年
  • 順天堂大学浦安病院 勤務
  • 2022年
  • 順天堂大学浦安病院リプロダクションセンター 副センター長 就任
  • 2023年
  • 北千住ART開院 院長就任

資格

医学博士
日本専門医機構 認定産婦人科専門医
日本生殖医学会 認定生殖医療専門医

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