不妊治療の先生に聞いてみた

funinclinic

より多くの家族計画の実現に─トーチクリニック 上野院、開院
【torch clinic 市山 卓彦 先生】

記事画像

2022年、東京・恵比寿に開院したトーチクリニックは、「より多くの家族計画の実現に寄与すること」をコンセプトに誕生しました。その思想の中心にあるのは、ただ妊娠を目指すのではなく、「いつ、何人授かりたいか」という将来の家族像を共に描き実現すること。そして、それを現実的に叶えるために欠かせないのが「高い臨床成績」と「通院しやすい環境」です。

体外受精などの高度生殖医療(ART)を受ける患者さんのうち、治療中に離職を経験する人はおよそ16~17%にのぼるとも言われています。トーチクリニックでは、完全キャッシュレス後日決済や院内処方による会計・薬局での待ち時間の削減、駅徒歩1分という好立地など、日々働く患者さんでも通いやすく、治療を継続できる体制を整えてきました。その結果、治療と就労の両立による離職率は5.2%と非常に低く、多くの方に「無理なく続けられる治療」として支持されてきました。

こうした体制をより広く届けるため、2025年3月には東京・上野に2院目を開院しました。新幹線停車駅という高いアクセス性に加え、オンライン診療や地域クリニックとの医療連携も活用することで、より広い診療圏から患者さんが通院しやすい環境を整えています。早くも開院直後から多くの患者さんが訪れ、人気のクリニックとして注目を集めています。

その開院を裏で支え、培養室の設計や機器類の導入、監視システムなどを提供するアステックの担当者とご一緒に、お話を伺い、培養室を拝見しました。

恵比寿院の開院から3年。自信を持って、より多くの患者様を迎え入れる体制が整いました。

2022年に恵比寿で開院してから3年、トーチクリニックには累計1万1000名を超える方々が来院されました。生殖医療専門施設として一般不妊治療からARTまで広く行っており、現在は先進医療やPGTーAなども導入し、幅広い治療を提供できています。2024年には採卵周期約1300件、胚移植件数約800件と、年間ARTが2000周期を超えるチームへと成長し、多くの患者様に信頼し選んでいただける医療機関となりました。

私たちの診療は、「目の前の妊娠」だけでなく、「カップルがどのような家族を築きたいか」を一緒に考えるところから始まります。ご年齢、心身の状態、希望される子どもの人数、治療への向き合い方や就労環境などを丁寧に伺いながら、納得と安心に支えられた治療計画を提案しています。この思想を支えるのが質の高い医療技術で、当院は生殖専門医、認定看護師、生殖医療専門心理士、認定生殖補助医療胚培養士など、専門性を兼ね備えた経験豊富なスタッフが多く在籍しており、凍結胚移植の妊娠率は単一胚移植の成績が54・1%(全国平均37・8%)と、高い成績を実現しています。上野院においても、培った確かな臨床技術と理念に支えられた医療を提供できると自信を持っています。

〝5年後のリビング〟を一緒に描く。家族計画の立案と実現を支える確かな診療スタイル。

トーチクリニックの診療は、「治療そのもの」ではなく、「おふたりが望む未来の家族を、どうすれば実現できるか」に軸を置いています。

私たちはまず、初診の段階で丁寧に「何人のお子さんを望んでいますか?」「いつ頃までに授かりたいですか?」といった問いかけから、ご夫婦それぞれの価値観や本当の望みを引き出し、それを〝言語化〟していきます。

その上で、妊孕性(妊娠力)や年齢、生活環境などをふまえながら、実現可能な選択肢をご提案します。国の統計によると、国内のカップルが希望する子どもの数は平均2・25人とされています。しかし現実には、不妊を理由に理想の家族計画を諦めざるを得ない方が多くいらっしゃいます。私たちは、そのギャップの存在に一日でも早く気づいていただくことが大切だと考えています。

カップルのニーズと現在の妊孕性から、不妊治療を行い、妊娠・出産・育児の終わった「5年後」までをあらかじめ視野に入れて、治療や家族計画の進め方を一緒に考えることが重要です。よりリアルな将来と選択肢をイメージすることで、カップルは質の高い議論ができ、丁寧かつ適切なスピード感を持って意思決定がなされるようになります。タイミング療法から始めることが良いカップルもいれば、性交渉がほとんどなく人工授精の方がスムーズに治療が進むケースもあります。

更にARTが必要な場合は、1回の採卵で得られる余剰胚を戦略的に保存することで、1人目だけでなく2人目、3人目への希望が残せます。開院から4年目を迎えた現在、1人目の出産と授乳を終えた方が凍結胚を用いて2人目、3人目を望まれるケースも増えてきました。

こうした未来を支えるには〝質の高い医療、培養環境〟が不可欠です。上野院の培養室は、アステックと度重なるディスカッションを行い、温度・湿度・空調・動線に至るまで徹底的に設計されています。これまで複数院の立ち上げの経験がある田中室長のもと、若手の培養士たちが新しい環境の立ち上げに携われたことは、チームにとっても貴重な財産になると確信しています。

全国の患者様に、より良い治療を──その思いが、上野院につながりました。

上野院は、「より多くの患者さんに、質の高い治療を届けたい」という思いから生まれました。

3年間で1000人以上の妊娠を見届けて参りましたが、カップルの幸福に寄与できることは、我々医療者にとってもやり甲斐であり、その積み重ねは自信にもつながります。恵比寿院での日々の診療のなかで、関東圏のみでなく、山梨・仙台・新潟、九州や離島など、遠方から通院される患者様が少なくありませんでした。「もっと通いやすい環境が整えば、より多くのカップルの選択肢が広がる」―その思いの結晶として誕生したのが、東京・上野院でした。上野駅は新幹線が停車する「北の玄関口」として、関東圏の広域、東北や甲信越などからのアクセスが良く、開院から3カ月足らずですが多くの患者様にご来院いただいております。

私たちは、お住まいの地域にART施設のない方々にも安心して治療を受けていただける仕組みづくりを進めています。たとえば、採卵や移植の重要なタイミングを東京で治療を行い、それ以外はオンライン診療と地元の婦人科と連携して通院を続ける「ハイブリッド型の診療スタイル」もその一つです。 地方では、専門施設やスタッフの確保が難しい現状もあります。だからこそ、私たちが高いアクセシビリティを備えた診療拠点を整え、専門性の高い医療を届けることが、これからの不妊治療の一つの形だと思っています。

培養室長に聞く、開院時やラボ(培養室)ワークに欠かせないアステックの協力

アステックさんとのつきあいは長く、15年くらいになります。トーチクリニックで働く前から新しい不妊クリニックの培養室設計、機器のメンテナンスでお世話になってきました。機器の調子が悪くなったときでも、いつも迅速に対応していただき、いまの信頼関係が培われてきたと感じています。

今回の上野院開業でも培養室の設計、機器選定など一貫してご協力いただいたのがアステックさんでした

胚培養士のキャリアの中で不妊治療クリニック開業に携わることはあまりないと思います。そのため多くの人は何から決めていいかわからず、困ることが多いと思います。

そういったときには不妊治療クリニック開業支援経験の多い企業さんと協力することがとても重要だと思っています。不妊治療クリニック開業を支援している企業さんは多いと思いますが、開業支援経験豊富なアステックさんは信頼できる企業のうちの一つだと思います。

今回の設計では、やはり院長も話されていたように、目標となる年間採卵件数を安全にこなせるような培養室を作ることが前提にありました。

そのためには広さが必要です。新しく開業する上野院も同規模かと考えましたが、実際にどのくらいの治療件数になるかわからないため、機器の選定にはとても悩みました。

アステックさんに将来的な採卵件数の目標を相談しながら、開業時に導入する機器と将来導入する予定の機器の選定をスムーズに行うことができました。

ラボだけでなく看護師の働きやすい動線、また採卵や胚移植時には、医師や看護師など他部門のスタッフの動線なども重要になってきます。設計時からクリニックスタッフ全員の動きをイメージしてアドバイスいただけるので、とても助かりました。

将来的にも大きく発展できる環境ができたと満足しています。患者様の貢献にも十分力が発揮できます。

torch clinic 市山 卓彦 先生

経歴

  • 2010年
  • 順天堂大学医学部卒業
  • 2010年
  • 順天堂大学医学部附属静岡病院 初期研修医
  • 2012年
  • 高知県立安芸病院産婦人科部長 産婦人科 助手
  • 2013年
  • 順天堂大学医学部附属順天堂医院
  • 2014年
  • 順天堂大学医学部附属順天堂練馬病院
  • 2016年
  • セントマザー 産婦人科医院
  • 2019年
  • 順天堂大学医学部附属浦安病院 リプロダクションセンター 副センター長
  • 2022年
  • トーチクリニックを開業

資格

日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
日本生殖医学会認定 生殖医療専門医

協賛:株式会社アステック

関連記事

最新記事