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AMH検査とは?方法やタイミング、どのくらいならいいのか?
【とくおかレディースクリニック 徳岡 晋 先生】
AMH検査とは?
AMH検査とは、血液中のAMH(抗ミュラー管ホルモン)というホルモンの値を測る検査で、卵巣予備能検査とも言います。
卵巣予備能(卵巣にどのくらいの卵子が残っているか)を予測する基準となることから、今の不妊治療になくてはならない重要な検査となります。
このホルモンは、前胞状卵胞という育つ過程の卵胞から分泌され、このホルモンの値(AMH値)が高ければ卵子の量も多くちゃんと育っている、あるいは残りの卵子の数が多いと考えられています。
反対にAMH値が低ければ、残りの卵子の数が少ないと予測することになります。
残りの卵子の数を予測できることから、どのように治療を進めれば良いか、また治療のスピードアップやステップアップをした方が良いのか、などのとても大事な検討をする上で必要になります。
検査方法や注意することは?
検査方法はとても簡単で、採血をしてそのホルモン値を出します。
検査の流れとしては、以下が一般的です。
1. 問診で生理周期や健康状態、妊娠経験などの確認をします。
2. 腕の内側から少量の採血をします。
3. 血液からAMH値を測定します。結果が出るまでに1週間程度かかることが多いです。
4. 通院中だったり、そのまま通院を開始する場合は医師と今後の治療方針を相談します。(その際はAMH値だけではなく、他の様々な要素も加味して検討します。)
また、正確な結果を得るために注意しなくてはならない点もあります。
1つ目は服薬の確認です。
一部の薬やサプリメント(特に低用量ピルなど)はAMH値に影響を及ぼす可能性があるので、事前に医師に相談しましょう。
2つ目は生活習慣を整える事です。
検査時には心身ともにリラックスしている状態が望ましいため、検査前から心身に過度なストレスがかかるようなことは控えるようにしましょう。
また、過度な飲酒や喫煙もAMH値に影響を及ぼす可能性があるため、こちらも事前に医師に相談し、検査前は控えるようにしましょう。
測るタイミングはいつがいい?
月経周期で決まっている検査としては、ホルモン検査があります。皆さんがよく知っている女性ホルモンには、卵を作るための卵胞刺激ホルモンFSH、排卵を促すLHでしょう。それから、エストラジオール(E2)、プロラクチン(PRL)※注は、大体月経の1日目から5日目の間ぐらいに測ります。
ただ、AMH検査に関しては、多少の変動はあるものの、いつ測っても良いとされています。そのため治療ではないですが、例えばブライダルチェックにAMH検査を含めることは、将来のためにもとても大切なことだと思います。むしろ、絶対に必要だと思っています。
結婚したくてブライダルチェックを受ける方は、きっと将来の自分たちのファミリーの計画を持っていると思います。
お子さんを何歳の時点で持ち、将来的に何人作っていくとか、そういう家族設計にも、AMH値が非常に活かせます。
それら家族設計を考え、逆算して何歳で産みたいと計画をたてるかと思います。ところが、現実として、実は自分の卵巣の年齢は10歳高かったというケースもあります。そうなると計画が変わってきますよね。ですので、早めに測っておくことが理想かと思います。
※注
エストラジオール:卵巣から分泌される女性ホルモンで妊娠や出産に大きく関係し、月経をコントロールするエストロゲンに含まれ、値が低い場合には更年期もしくは閉経が考えられる。40代前後から急に減少し始めるホルモン。
プロラクチン:プロラクチン(PRL)は、乳汁分泌ホルモンとも呼ばれ、母乳を作るホルモンのこと。 授乳期間中にまた妊娠をしてしまうと、母体への負担が大きいことから、このホルモンが活発な間は、身体が自然と妊娠しにくい状態になる。
AMH値に正常値や標準値はあるの?
個人差のある検査なので、何歳の人はいくつのような正常値や標準値はありません。
卵がとてもたくさんあり、生理不順な方には、多嚢胞性卵巣症候群の症状が多いのですが、そういう方は飛びぬけて値が高く、10を超えることもあります。
そのため、なかなか平均値というのは難しいのですが、多くの採血をしている母集団を出せば、そこから大体20代後半だとこれぐらい、30代前半だとこれぐらいというのがわかります。
例えば、多くの施設で参考としているものにJISART(日本生殖補助医療標準化機関)の参考基準値があり、測定値の年齢分布(中央値)表もありますから、この値だと何歳程度ということもわかります。1歳刻みでわかり、例えば2ng/ml(2ナノグラムパーミリリットル)~だったら何歳相当とか、値が1を切ってくると42歳以上とか、そういう風に、ホルモン値であと卵巣に残っている卵子の数がどれぐらいですよ、何歳相当ですよ、ということを表しています。
例えば30歳の方が測ったときに、その値が非常に低く、2ng/ml〜ということですと、30歳なのに35歳、あるいは2ng/ml より低いようなら40歳手前の卵子の数という風に、年齢が比較されてわかります。
判定上の注意(留意事項※)もありますが、30歳の方が、もう30代半ばとか後半と聞くと少し焦りますよね。ただ、治療計画を立てて、どうやっていくかということに関しては、その患者さんに非常にわかりやすいという検査です。
※【判定上の留意事項】
日本産科婦人科学会の生殖・内分泌委員会、生殖医療リスクマネージメント小委員会の報告として、AMH測定に際して次の4項目を留意事項としてあげています。
1 AMHは卵子の質とは関連しない。
2 AMHの測定値は個人差が大きく、若年女性でも低い場合や高齢女性でも高い場合もあり、測定値からいわゆる「卵巣年齢」の推定ができるものではない。
3 測定値と妊娠する可能性とは直接的な関連はなく、測定値から「妊娠できる可能性」を判定するのは不適切と考えられる。
4 測定値が低い場合でも「閉経が早い」という断定はできない。
そして、35歳が妊娠するための大きな一つのラインで、不妊治療をしていく上でも妊娠率が下降していくラインになってきます。
今のAMH値を知っていれば、あとは2歳刻みでだんだん下がっていきますから、35歳の時の値もなんとなく想像でき、一つの指標にできます。
AMH値が高い場合
AMH値が高い人は、多嚢胞性卵巣症候群の方が多く、年齢の若い方でもなかなか妊娠しにくいです。
また、生理が2カ月来ないとか、3カ月来ないとか、そういう人たちは大体10は超えていたりします。10以上になってくると、やはり妊娠がしづらいです。
中には1人目はできたけど、2人目がなかなかできないということで来られ、その時に「月経不順」であれば、まずAMHを測ります。すると、やはり10を超えている人たちがいます。
では、AMH値が高い方は自然妊娠ができないかといえば、必ずしもそうではありませんが、不妊治療をする可能性はあるということを認識しておいてもらったほうがいいです。
治療することによって、しっかりとお子さんに恵まれると思います。
AMH値が低い場合
AMH値が高い方の話をしましたが、低い方のほうが少し大変になります。
もう「卵子の残りの数が少ないですよ」ということですから、少ない中でどのように妊娠できる卵子と出会えるかということになります。
若い方であればAMH値が低くても自然妊娠される方はいますし、人工授精やその後に体外受精へとステップアップしていく中でお子さんを持つことはそれほど難しくはないと思います。
しかし、年齢が高い場合がちょっと大変なのです。なぜ大変かというと、加齢に伴い卵子にも変化が起こり、染色体異常が多くなるためです。
その場合でも妊娠する可能性が0というわけではないので、なるべく早く治療に臨みましょう。
自分のAMH値を知ることで、適切な対応や治療を早期に開始することが可能になるため、早めにAMH検査をするようにしましょう。
とくおかレディース
徳岡 晋 先生
経歴
- 防衛医科大学校卒業
- 同校産婦人科学講座入局
- 防衛医科大学校附属病院にて臨床研修
- 自衛隊中央病院(三宿)産婦人科勤務
- 防衛医科大学校医学研究科(医学博士取得課程)入学
- 学位(医学博士)取得(平成12年)
- 平成12年 木場公園クリニック (不妊症専門) 勤務
- とくおかレディースクリニック開設
資格
日本生殖医学会 認定生殖医療専門医
日本産科婦人科学会 認定産婦人科専門医