できるだけ早く結果を出すことで患者さまの人生設計に役立ちたい!
【春木レディースクリニック 春木 篤 先生】
春木レディースクリニックの診療理念は、患者さまを出来るだけ早く妊娠に導くことです。そこには、治療を受けるご夫婦が、いっときの治療に埋もれることなく、治療を終えた後も、その後の人生がより良い形で展開できるように、との願いがあります。
そのためには、「患者さまそれぞれのライフスタイルに合わせ、希望や気持ちも大切にした診療をすること。そして適応に沿った無駄のないベストな診療をすること。何よりも患者さま、スタッフの皆も安全で安心できる環境のもとで診療すること」を方針として実行していくのが春木先生のスタイルのようです。
急成長を遂げる春木レディースクリニックは、その信念の上にあることを知り、春木先生にお話をうかがうとともに、導入されているARTセキュリティマネジメントシステムについても教えていただきました。
大切にしている診療理念
そこには周産期医療で得た経験が生きています
妊娠・出産は、ご家族にとっても社会にとっても大変めでたく、とても幸せなことです。
それは同時に、女性にとっては、非常に危険を伴うものです。実際に私も医師としていくつかの診療科を経験したのちに、勤務した病院のICU(集中治療室)管理中に急変した重篤な妊婦さんの緊急手術をしたことがあります。
腹腔内の見えにくいところに大出血を起こし、一刻の猶予を争う事態のなかで、冷静に対応し、無事一命をとりとめました。
その時に、命の尊さと宿している新たな命、その母子の姿に感銘を受け、周産期医療を経て生殖補助医療へと進んできました。
そのような経験があるからこそ、診療に臨んでは、常にしっかりした妊娠・出産に結びつくことを考えた不妊治療を行うことを理念としています。そして、新しく誕生する命のことを大切に診療をすることは、私たち生殖医療を行う医師の使命だと思っています。
それぞれの患者さまにはそれぞれの治療があります
春木レディースクリニックには、開院から現在まで、一般治療周期、体外受精-胚移植による治療周期、妊娠成立後の治療周期の記録が合計で延べ約10万周期ほど蓄積されています。
その中には、子宮内膜症、子宮筋腫、卵管異常(卵管留水腫を含む)、子宮形態異常などの婦人科系の疾患を合併した方の治療データも含まれます。 体外受精のデータでは、卵巣刺激法、使用した薬剤の種類、量、使用した期間と採卵数、受精数、凍結できた胚盤胞の数やグレードなど詳細なデータや成績を瞬時に確認して判断できるシステムになっています。
医師はこれらのデータに基づき、週に2回のミーティングにて今後の方針について確認を行います。そして、月に一度は合同カンファレンスを開催し、医師はもちろん、胚培養士、看護師、受付などのコメディカルが参加する体外受精会議を行い、月毎の臨床成績の確認や、治療がうまくいかない方に対する治療方針のミーティングを行います。
私どもがいう「100人の患者様がいたら100通りの治療法がある」というのも、こうした蓄積されたデータに基づくミーティングにより、個々の治療方針を決定するというプロセスがあるからです。
そして、データを解析することで新しい発見と我々の自信になり、新しく来られる患者さまの治療にも役立っています。
豊富な治療実績
そしてつながる社会貢献
蓄積された実績と経験があると治療計画がより立てやすくなります。その実績や経験が、医療者の意思決定をサポートし、患者さまへのより厚みある診療や適応などの医療提供へと繋がっていきます。
当院には現在、常勤、非常勤を合わせて9名のドクターがいますが、医師は週に2回のミーティングで、治療方針に関するディスカッションや教育を常に行っています。
そこでより明確な治療プログラムを作成し、そのプログラムを全職員が共有することで患者さまへの最適な治療の流れができます。
その流れが患者さまにも伝わり、最適な治療が理解し合えればより無駄のない治療でより早く結果に結びつきます。その実践が成績の向上にも繋がって、年間妊娠者数1200人以上(2023年)という今の春木レディースクリニックの実績になっています。
当院での妊娠実績がさらに増えれば、新たな患者さまにも希望を提供でき、より多くの患者さまに喜びを届けられると信じています。
そして、スタッフの更なるレベルアップや診療の効率化を図りながら、より多くの患者さまにご来院いただき、さらに多くの出産でご夫婦の将来設計のお手伝いをし、社会貢献していきたいと思っています。
診療の効率化と安全への取り組み
先に周産期医療のお話をしましたが、不妊治療は、妊娠・出産に向けて不妊に悩む患者さまに寄り添って治療を行うものです。そこにはご夫婦の大切な新しい命が関係してきますから、私たちはしっかりした安全で安心できる妊娠を目指さなければなりません。
そのためには、治療を行う上での安全性がとても大事になります。スタッフにもミスのない作業が要求され、特に卵子や精子、受精作業や胚培養、凍結保存から融解胚移植まで、全ての段階で安全が確保できる環境が必要です。
患者さまが増えるとともにラボワークの作業も増加し、独自に続けてきた取り違え防止の危機管理手順に加え、総合的かつ客観的な安全管理システムの導入が必要と考えていました。その時に、イギリスやオーストラリアでは、安全管理システムの導入が政府によって義務付けられているとの話を聞きました。
そこで私たち春木レディースクリニックが選んだのが、クーパーサージカル社のサンプル取り違え防止システムRI Witness でした。
このシステム導入により、これまで複数の胚培養士によるサンプル確認作業に加え電子タグによるトリプルチェックシステムを構築し、患者さまの大切なサンプルを管理しています。
サンプル管理システムにより、患者さまに安心を提供
確認作業にやりすぎはありません。確実な作業は、大切な検体を預けていただける患者さまに、安心を提供できていると信じています。
松村培養室長は、学術セミナーの場で導入意図やクリニックでの運用方法についても説明されています。
培養室の1日の作業には、患者さまの検体を取り違えることのないよう、複数の胚培養士によるダブルチェックがありますが、その項目はとても多いです。胚や精子を容器から別の容器へ移すときや、今扱っている検体が正しいかの確認の際にはRI Witnessでも管理をし、厳格なサンプル管理に努めています。
当院に導入しているシステム(下図参照)では、患者さまの持つ診察券から始まり、診察券の患者さま情報が、採精カップや検卵用のディッシュに引き継がれ、体外受精や顕微授精の際にその精子と卵子に、ご夫婦のもので間違いないかを電子的に認証を行います。
正しいサンプルであれば、次のステップに進むことができますが、ミスマッチがあれば大きな音でアラームが鳴ります。さらに胚凍結、胚移植時にも同じように電子認証を行います。
RI Witnessは、作業エリア内に電波が張り巡らされ、エリア内にある、すべてのタグを同時に読み取り管理します。そのため、不適切なサンプルがエリア内に存在すれば、システムが警告を発するため、正しいサンプル同士しか近寄ることのできない管理システムとも言えます。これにより胚培養士も先入観にとらわれず、安心してサンプルを取り扱うことができます。
読み取られた情報は専用のPCで表示され、胚培養士はその表示を見ながら、ダブルチェックとともに認証作業をしていきます。
RI Witnessは、欧州、米国、アジア各国ですでに200以上のART施設で運用されています。特に、英国とオーストラリアでは90%以上の施設で導入されているとのこと。
春木レディースクリニックでは、総合的な判断から導入を決め、企業の担当者と松村培養室長を中心に、システム構築を進めました。
春木レディースクリニック
春木 篤 先生
経歴
山梨大学医学部卒業
横浜市立大学医学部附属病院産婦人科入局
横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター助教
IVFなんばクリニック医長
IVF大阪クリニック副院長
資格
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
日本生殖医学会認定生殖医療専門医