不妊治療の先生に聞いてみた

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精子選別でこの技術の必要性がなくなることはないと思います。
【メディカルパーク湘南 田中 雄大 先生】

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「医師になったからには、一流の技術を持った医者になりたい」と自らのホームページにもあるように、新しくて良い医療技術には常に興味をもち、産科から生殖医療まで、広く格好良く診療活動をされている医師です。4つの分院を持つ全国有数の専門施設メディカルパーク湘南院長。

メディカルパーク湘南は、神奈川県藤沢市にあって、産科から婦人科・不妊治療まで、周産期における様々な医療と生殖医療までを扱う県有数の専門医療施設です。

院長の田中雄大先生は、常に時代の流れを掴み、医療に新しい技術を取り入れながら診療を行う、頼もしいトップドクターです。

不妊治療においても、絶えず有効な最新医療技術を導入し、診療に活用しています。

今回、不妊治療の保険適用化で話題となった先進医療技術の中から、膜構造を用いた生理学的精子選択について、お話を伺いました。

最近の患者さんの様子

不妊治療が保険適用になったこともあり、最近は、比較的若い世代の人たちが日頃からお二人で診察にいらっしゃる方が増えました。

もともと不妊治療というのは、一人の問題ではなく、夫婦二人で取り組んでいくものです。夫婦のどちらかに問題があって、どちらかの責任になるというものではなく、二人で一緒に臨んでいく二人三脚が必要だと思っています。それがだいぶ認識されるようになってきました。

それには、社会や企業における働き方改革での取り組みがあって、女性だけでなく、男性が休みやすくなったこともあるかと思います。平日でも普通にお二人で来院され、それはとても良いことだと思っています。

精子数の減少

それから、これは以前からいわれていることですが、間違いなく全体的に精子数が減少していると思います。何しろ、50年前と比べて半分になっているといわれています。これは人間だけでなく、様々な動物にいえることのようです。

精液検査の時に参考としているWHOの基準値をみても、どんどん下がってきています。ひと昔前は、濃度が2500万/mlだったのが、今は1600万/mlまで下がってきています。昔の基準だったらほとんどの人が当てはまってしまいます。

稀にすごく多い人はいます。

一昨日も、7500万/mlもある人がいて、昔の人みたいだと話してしまいました。そのようなこともありますが、最近は本当に少ないです。

顕微授精における精子選別法の変化

精液所見でこれだけ精子数の減少、質の低下を見ていると、さすがに心配です。精子が気になります。

今までの私は、どちらかといえば女性の卵子が大事といっていたのですが、精子に注目せざるを得ません。 

顕微授精をするのにも、元気な精子が1匹いればいいなんて考えではダメだ!と強く思い始めていました。

そのような時に、ザイモートと出会いました。正直、この方法には反対する理由がないと思い、導入時、患者さまに聞いてもほぼ実施を希望されていました。先進医療ですから自費になりますが、導入後10カ月の今でも皆様が希望されています。

私自身、今ある先進医療の中では、ザイモートは一番エビデンスがしっかりしていると思っています。その根拠は明確で、精子そのものが傷つくか傷がつかないかの比較だけなのです。どちらが良いかといえば傷つかない方がいいに決まっているという、とても明瞭なものです。それに、反証がないというのも良い面で根拠になっています。遠心分離機にかけないことで、精子へのダメージが少ない、特殊フィルターを通過することで、DNAの損傷が少ない精子が選別できるということをお話すると、顕微授精をするほとんどの方が選択されています。

使っていて、患者さまからのネガティブな意見や小言がないというのもクリーンで良いと感じています。

良い精子が選べる?

では、確実に受精できたり流産率を下げたりすることのできる精子が選びやすくなるかといえば、そこまで言えることではありません。

それは、もともとの精子の状態や患者さまの違い、最終的に顕微鏡下で選び出す胚培養士の違いもあるからです。ただ、自信をもって言えることは、よりダメージの少ない精子を選べるということまでは明確に言えるだろうということです。

ザイモートを使用してからの受精率や流産率などの比較は当院でもしていますが、今のところ明確な違いは出ていません。半年以上、1000症例ほど調べていますが、はっきりした優位差というものは出ていません。
 

ただ、データの取り方によって、例えば40歳以上の方の場合ですとか、精液所見の悪い方の場合ですとか、条件設定によっては、データに優位差が出てくる可能性はあると考えます。

培養士さんの技術の影響?

最終的には胚培養士が選ぶわけですから、その技術差での影響と思われるかもしれません。しかし、当院に限らず、胚培養士が優秀であればザイモートは必要ないのかといえば、そうではないと思います。

胚培養士の技術に関係なく、精子そのものに傷がつかないというところのエビデンス自体が明確なので、この技術の必要性が、精子選別においてなくなることはないと思っています。

この技術に関しては、精液所見で問題のない方の顕微授精に向けた精子選別において、世界のスタンダードの技術になっていく可能性は十分にあるものだと思っています。

世界のスタンダード!?

まずは、よりダメージの少ない精子を選別できるという意味で評価ができること。それともう一つ、操作がわかりやすく簡便なので、体外受精や顕微授精の需要が増えてきた時に、培養士の経験や技術力に頼らず、顕微授精に向けて精子調整ができる精子選別法で、特別な技術を必要としないユニバーサルな技術として普及していくものと思っています。

精子や卵子の質に関係することは?

質に関しては、卵子より精子のほうが改善しやすい面はあります。

これは卵子と精子の作られ方の違いによります。女性が生まれてくる時には既にできている卵子と、男性の成長過程から日々造られ続けていく精子という大きな違いです。そのため精子は生活習慣の影響を受けやすく、それを改めることで改善の余地があります。

女性の患者さんに、卵子のことを質問されたら普通に生活してくださいと申し上げますが、男性には、生活の様子とか、仕事は何をされているとか色々と聞いてしまいます。

精子は生活習慣による影響を受けやすいため、運動やスポーツなどをひかえるとか、タバコをやめるとか、お酒は少しにしましょうとか、熱い湯船に長時間の入浴やサウナも避けましょうとか、過度なストレスも避けるようにとかを伝えているからです。

実際に守っていただくと、次回の検査結果が違ってくることがあります。

ザイモートを使うことで培養士さんに変化は?

仕事が楽になり、余裕と安心がでてきたとする培養士の意見はあります。

また、教育やトレーニング面でも、ザイモートは特別な技術を必要としないために、新しいスタッフにも教えればすぐにできることですから、今まで数カ月以上かかっていたトレーニング期間が一カ月以下に短縮されました。 院内でも皆が驚いています。

ザイモートを使うことで培養面での変化は?

精子の動きはいいです。膜を越えてくるものの中には、若干形が整っていないものが多いような気がしますが、これは受精に適さない大きな精子が膜を越えられなくなる一方、適正精子以外の細長い精子や小さい精子が膜を越えるからだと考えます。

むしろ精子選別の安全性が高まったという感じです。

今後の展望

当院においては、これがなくては治療が成立しないというところまできていると思います。

現在、顕微授精前の施行率は9割以上ですが、おそらく今後もそれが続いて、このままこのスタイルでいくのがベストチョイスを意味しているものと思っています。時代の流れで、不妊治療でも夫婦診療が進み、患者さんもどちらの原因ということなくパートナーと同じ意識で治療臨んでいます。医療者側も男性を診る泌尿器科の先生が外来を任されています。それも精子を大事に考える時代の流れなのでしょう。

今のところ、私はザイモートに関しては、次世代の不妊治療のスタンダードになるのではないかとの展望を持って、診療に取り入れています。

とはいえ、これが5年後10年後にまた変わってくるかもしれません。
体外受精とは、そういう時代の流れの上にあるものだと思っています。


男性の精子数が50年間で半減している時代、ICSIに向け精子選別法が注目されるのは必然のこと

精子数の減少が心配される時代だから精子への注目度も高いのです

メディカルパーク湘南
田中 雄大 先生

経歴

  • 1997年
  • 慶應義塾大学医学部 卒業
  • 1997年
  • 在沖縄アメリカ海軍病院 インターン
  • 1998年
  • 慶應義塾大学医学部産婦人科学教室入局
  • 1999年
  • 川崎市立病院
  • 2000年
  • 大田原赤十字病院
  • 2001年
  • 慶應義塾大学医学部産婦人科教室助手
  • 2003年
  • 大和市立病院
  • 2004年
  • 慶應義塾大学医学部医学博士取得
  • 2006年
  • 矢崎病院
  • 2009年
  • 湘南IVFクリニック開業
  • 2009年
  • 聖マリアンナ医科大学非常勤講師就任
  • 2011年
  • 中国蘭州大学第2附属病院 名誉教授就任
  • 2012年
  • メディカルパーク湘南へ移転・名称変更
  •  
  • 現在に至る
                       

資格

医学博士
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
日本産科婦人科内視鏡学会 技術認定医
日本外科内視鏡学会 技術認定医
母体保護指定医
日本生殖医学会 生殖医療専門医

協賛:株式会社東機貿

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