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SQAシリーズが、一般泌尿器科や内科などの施設にも広がっています。
【産婦人科クリニックさくら 桜井 明弘 先生】
「カラダに優しく、妊娠後にも優しく、こころに優しく」をコンセプトとし、ウィメンズヘルスケアと生殖医療(不妊治療)の二本柱で診療を行っています。生殖医療においては、最新の検査や治療法を取り入れながら、妊娠後のリスクを避けるために単一胚移植を一貫して行っています。 そして、これからも思春期から更年期以降まで、女性のライフステージに寄り添った診療を進めてまいります。
妊娠して元気な赤ちゃんが生まれるのも、はじまりは女性の持つ卵子と男性の持つ精子が一緒になることからです。
そこに何らかの原因があり、不妊治療が必要になった場合、不妊治療ではそれらの質との戦いにもなってきます。
質を見るためには検査があります。
本日は、この検査の部門で精子の検査に活躍している企業(ジャフコ)の機器と、ユーザークリニック(産婦人科クリニックさくら)桜井院長との対談の様子を紹介します。
検査機器は、最近のプレコンセプションケアやブライダルチェックの進展から需要が高まっている精子特性分析機器SQAシリーズの最新版iO、VUです。
桜井院長は、「カラダに優しく、妊娠後にも優しく、こころに優しく」をコンセプトに、生殖医療だけでなく広く産婦人科医療に携わっている医師です。
医療現場で活躍する機器には、何よりもユーザーの意見が大切です。企業はその意見を反映することで、より良い製品を現場に投入できるのです。
ジャフコ
現在、東京都は少子化対策の1つとして従来の不妊治療に対する支援だけではなく、プレコンセプションケアを積極的に展開し、妊活支援を広めるために取り組むとの発表をしました。
今、その話が私たち精子の検査を行っている企業の間でも話題になっています。
精液検査を受けるのに、既婚者に限らず18歳から39歳の独身男性でも、条件をクリアすれば今までの助成金を受けることができるとニュースで取り上げられたからです。このニュースの影響で、これまでは不妊治療施設からの引き合いが多かったSQAシリーズの販売が、最近、一般の泌尿器科や内科での需要として広がってきている状況です。
桜井先生のところは生殖医療ということで、以前からSQAシリーズをお使いいただいておりますが、このようなプレコンセプションケア、あるいはブライダルチェックのメニューで行う精液検査についてはどのように思われますか?
また、SQAシリーズの新機能についてはいかがでしょう?
男性も女性と同様に子どものいる将来を描いて意識を高めることは大切だと思います。
先生
最近、男性にとってのブライダルチェックとかプレコンセプションケアといった言葉が社会に浸透してきていますね。
ブライダルチェック自体はかなり前から使われている言葉ですが、一般的には女性がこれから結婚して、その後子どもを産んで育児をしていくことを予測して、今の自分に病気がないかを見るためのものです。
男性の場合は、将来、子どもを持つことに関する生殖のためにという意味では、診療メニューのように診るものはなかったように思います。当院が開業したのは10年以上前の頃になりますが、その頃から、そろそろ結婚をするので精液検査をしてほしいと言って来院する男性の方もいましたが、その方たちは、先輩や知人、親族などから精液検査があることを知らされていた方たちかと思います。
自分に精子が少なかったり無かったりしたときに、これから結婚する奥さんに苦労や迷惑をかけてしまわないかどうかをあらかじめ知っておきたいという人です。
一般的な精液検査というのは、不妊治療での検査となり、定義からすれば、ご夫婦が子どもを望んで避妊をせずに1年間性生活を送ったが妊娠しない、という時に初めて不妊症と考え検査を受ける時となります。
それらの状況を考えれば、以前から自分の将来の事まで見据え、精子を調べておきたいと考える男性はいたわけです。東京都が推進を考えるプレコンセプションケアは、そのような方により身近に検査の機会を与えるとともに、男性に日頃から精子にとってよくない習慣を見直す啓発の意味でもとても良いことだと思います。
例えば、「タバコを吸わない」とか「お酒を減らす」あるいは「感染症」などです。
これら良くないことは男性にとっても女性にとっても同じです。
プレコンセプションケアは、それらの情報を提供し、早めの検査にも結びつきます。
そこで男性の場合は精液検査になりますので、これはかなり広まってくれるとありがたいと思っています。
ジャフコ
私たちにとっては、機械の需要が高まり、検査現場で有効に使っていただけることをありがたく思います。
実際に産婦人科や不妊治療の現場だけでなく、一般の泌尿器科や内科や検診センターで、健康診断のオプション項目に入れたいといった需要が増えています。
先生のところでは、このSQAシリーズを前のモデルから使っていただいていますが、今のモデルではさらに進化しています。
以前は一般的に顕微鏡でカウントした精子濃度と運動率、形態観察を中心に精子の判定をしていましたが、SQAでは前進運動精子濃度と平均精子速度を考慮したSMI値を出せるようになりました。
SMIの測定と治療の方針の関連性などについて、現場ではどのように使われているのかお聞かせください。
先生
SMIは、確かに御社の機械の売りになる部分ですね。当初のモデルを初めてプロモートしていただいた時に、すごい数値だと思いましたし、それを重視していました。
どこかの学会発表で、SMI300以上はとても良い治療成績が望めるという発表があり、当院でもSMI300という数値をとにかく絶対値として見るようにしていて、それを超えている人は心配ないですよという説明をしています。そして、当院も学会で発表したことがありますが、SQAシリーズでは高速前進運動精子を測れるのが最大のメリットで、今までは培養士や医師の目で運動率はもちろんカウントするけれども、運動性の良さというのはざっくり見て、この人は結構いいねとか結構スピードが遅いねとか評価していたのが、可視化されたというか数値化されているため、治療検査としては重要なデータになると思っています。
当院では高速前進運動精子が精液全体の中で2000万個を超えているか超えてないかで治療成績が変わると判断しているため、今は主にその数値を重視しています。
要するに高速前進運動精子がたっぷりいたほうが良くて、そこがやはり妊娠には大きく関係してくるものと考えます。
卵子側との関係もあり、精子側の評価だけで妊娠に結びつくわけではない
ジャフコ
ユーザーの皆さまからよく言われることとして、いくら精子の運動性が良くても女性側の卵子との相性やその質の問題のことがあります。
結局のところ、精子がいくら良いからといっても妊娠との直接的な相関評価ができない、そこにつながらない部分があるということも関係しているようです。
逆に卵子の質が良くて精子の質がどうかという時にこそ、この精液検査があるのですが、これで妊娠できますよと言えれば1番良いのでしょうが、あくまでも精子の検査をするものです。
以前のSQAーVからSQAーiOになったことで、便利になったポイントで、先生が感じたことを教えてください。先生はどう思われますか?
先生
とにかく小スペースですね。
Vのほうは立派な機械でしたが、デバイスを小さくできたというのは非常に良いことだと思います。
どの様な工夫をされているのでしょう?
ジャフコ
iOの場合、本体は光を出すシステムとそれをキャッチするセンサー部分だけで、それを解析するコンピュータはクラウド上にあります。
SQAは、光を出す部分とその光をキャッチする部分の間に検査用キットを置き、精子の通り具合で遮られる光の量に違いがでることを応用しています。遮る精子が多ければ多いほど上に通る光が少なくなるという原理です。
その原理は同じでも、操作に使うスイッチや液晶モニター、解析用のコンピュータなどの部品を全て本体から出してPCを使い、クラウド上で行うことで、ここまで小さくして、壊れる部分もなくなったうえに価格も従来品より安くすることが出来ました。
先生
発想の転換というか、今の時代ならではのデバイスですね。
ジャフコ
以前は医療機器はインターネットに繋ぐのは情報セキュリティの問題で難しいという面もあったのですが、アメリカなどではインターネットに繋ぐシステムが増えてきたため、FDA(アメリカ食品医薬品局)が整備をしっかりして、このように検体を扱う情報の管理に対して規制が厳しくなっています。
SQAーiOは、そこもクリアしているので、機器に関してはインターネットに繋いで検査情報のやりとりをしても安全という考え方ができるようになってきました。このSQAのインターネット化につながったこともコンパクト化に寄与しています。
先生
これから先、血液検査の機械なども追随するようなものができてもおかしくないですね。
ジャフコ
すでにアメリカではインターネット化した新しい仕組みも出現しています。
精液検査は運動性が重要になるため、採取してから1時間以内に測定する必要があります。アメリカでは大手の検査会社が精液検査の依頼があるとSQAを持ってクリニックを訪れてその場で測定し、インターネットを介してデータを中央に戻し、病院様のシステムに結果を送るという使い方もしているそうです。
それから今回は専用の顕微鏡システムVUとSQAーiOをセットできるドッキングステーションが発売されました。本来ならそれぞれをUSBで接続するところを、ひとつにまとめてデザインの統一感を演出するだけでなく、不安定になりがちなUSB給電も安定させる一石二鳥のシステムです。
今ご覧いただいているように、かなりクリアな画像に撮れます。昔のSQAーVは解像度がちょっと粗かったのですが、今回は1188倍の倍率で高解像度になっているため、学会の展示会場で見られる先生方や顕微鏡をのぞいている胚培養士の方からも、綺麗ですねと言っていただいております。
そしてもう1つは、ラボのSQAー iOで検体を測定した結果のレポートとVUで撮影した精子の画像や動画が診察室のパソコンのモニターでリアルタイムにチェックできて、患者さんにもその場で見てもらうことができます。
特に高度生殖医療の現場では、胚培養士が出入りする度に着替えなどがあるため、胚培養士さんたちがラボ内にいながら、診察室の先生はリアルタイムで得られる検査結果だけでなく精子の画像も患者さんに見せられると言う特徴が加わりました。
画像データも動画と静止画それぞれ10個ずつ保存できるようになりました。
そこで今後さらに、どのように使われ、応用されるのがよいかなども少しお伺いしたいです。
先生
こちらとしても、精子の状況を動画にして患者さんにお見せすればすごく理解も深まると考えます。
実際のところ、それを見たところで良いのか悪いのかもわからないと思いますが、やはり患者さんは自分の精子を見たことがないため、見ることですごく納得感を得られると思います。この検査をやって良かったとの満足感を感じる時です。
以前、私はSQAを自分の診察室において精液検査をその場でご主人にお見せしていました。SQAのあの小さなモニターで見ていただきながら説明していたのですが、皆さん、自分の精子を見たことがないのですから、そのモニターを食い入るように見ます。
さっきも申し上げたように、精子を見たからといってなんてことはないのですが、(数字は大事なのですが)、患者さんはやっぱり何でも自分のものというのは、見ることですごく大事な納得感を得られると思いますので、すごく意味あることだと思います。
客観性を持って評価できるというのは、SQAシリーズの最大の功績です。
ジャフコ
あともう1つ、今度のSQAーiOでは、患者さん情報の中にデブリ評価を追加することができます。顕微鏡で見た精子に細胞片などのデブリが多い場合に、デブリの多さを四段階に分けて入力することで、濃度カウントに補正が加わってより正確な精子濃度を得られることができるようになりました。
精子を機械で測る時の弱点だった「精子と同じ大きさの細胞片やゴミ」をカウントして、実際よりも精子濃度が多く出てしまうといった問題を減らすことができるようになりました。それについては何か感じられそうですね。
先生
経験のある胚培養士さんにも有用だと思いますが、逆にあまり精液検査に慣れていない方にも良さそうですね。
それこそさきほど、一般内科とか一般の泌尿器科でも扱ってくれているということですから、先生も精液自体をあまり見た経験がないでしょうし、その他の職種の方が検査に携わることもあると思いますからとても有用だと思います。
ジャフコ
専門家がいらっしゃるところだけデブリ評価のチェックを入れて、より精度の高い結果を出すというシステムが追加になったことをお伝えして、こちらからお聞きしたかったことは一通り聞けたのですが、他に何かトータルして先生の方からSQAに対して感想なり要望なりございますでしょうか?
先生
そうですね。もう16~17年、ほぼ開業した頃からお世話になっています。
かつては全部目視でカウントをしていましたが、目視も培養士さんのスキルによっては、同じ検体を見せても数が違う場合が生じます。そういうところが客観性を持って評価ができるというのは、SQAシリーズの最大の功績だと思います。それがさらに使いやすく進化しているというのは、とても評価したいところです。
このロゴもとても可愛いですね。医療機器ではSQAーVも無骨な感じでしたが、この精子のイラストのデザインが丸みを帯びてスタッフに好評です。やはりこういう新しいものを入れたデザイン性の良いものが、イタリアとか北欧じゃないですけど、身の回りに置いてあるのはいいことですよね。ですので、トータルでとても良い機器だと思って使わせてもらってます。
ジャフコ
ありがとうございます。それから、ここに日本の国旗が描いてあるのですが、そこをクリックすると10カ国語で表示できます。外国人の患者さんが来られた時に、例えば最近ですとベトナムの方とか、ブラジルの方とかが来た時に、アーカイブから母国語でレポートをプリントしてあげると、患者さんの理解が深まってとても喜ばれるそうですよ。
先生
それは活用したいですね。ありがとうございます。
産婦人科クリニックさくら
桜井 明弘 先生

経歴
順天堂大学を卒業後、同大学産婦人科教室に入局。
不妊・内分泌、腹腔鏡下手術を専門。
同大学院在籍中に、東京女子医科大学第2生理学教室に国内留学し、精子由来の卵活性化因子を研究、同研究で日本受精着床学会より「世界体外受精会議記念賞」を受賞し。 平成13年 東京都より地域周産期センターの指定を受けている賛育会病院の産婦人科管理医長として勤務。不妊診療のみならず、妊娠・分娩の管理を行う周産期医療、婦人科悪性腫瘍などの研鑽を積みました。
・医療法人産婦人科クリニックさくら理事長・院長
・一般社団法人横浜市青葉区医師会理事
資格
日本産科婦人科学会 認定産婦人科専門医