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不妊治療をはじめる前に知っておくべき妊活の基本
【とくおかレディースクリニック 徳岡 晋 先生】
まずは生活習慣に目を向けて。自分たちでできることからスタートする
不妊治療を始める前に、まずは「妊活」にチャレンジしましょう。妊活とは自然に妊娠することを目指して行うさまざまな準備や活動を指します。多くのカップルが最初に取り組むのは、この妊活の段階です。妊活には生活習慣の改善やタイミング法、栄養管理などが含まれますが、特に大切なのはパートナーと協力しながら心身を整えることです。
妊活とは? 不妊治療との違い
妊活とは妊娠を目指して行う活動のことです。妊活の目的は、あくまで自然に妊娠することです。具体的には生活習慣の見直しや、排卵日を狙ったタイミング法、適切な栄養摂取、ストレス管理などを行います。妊活は医療介入なしで行うため、日常的にできる範囲で自分たちの体調を整え、妊娠しやすい環境を作り出すことが重要です。
一方、不妊治療は妊活を行っても妊娠に至らない場合に行う医学的なサポートを指します。不妊治療には排卵誘発剤、人工授精、体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)などが含まれます。妊活と不妊治療は目的が同じでもアプローチが異なり、不妊治療は医学的な介入を伴います。
妊活と不妊治療の違いを理解した上で、まずは妊活として生活習慣や心のケアを大切にすることが妊娠への第一歩となるでしょう。
最初に生活習慣を見直しましょう
妊活を始めるにあたって最初に行うべきことは生活習慣の見直しです。健康的な生活を送ることが妊娠に向けた基盤を作るための最も重要なステップとなります。妊活中に心がけるべきポイントは以下の通りです。
【健康的な食事】
妊娠を希望する女性にとって適切な栄養素を摂取することが大切です。特に葉酸やビタミンD、鉄分、カルシウム、オメガ-3脂肪酸などが妊娠を支える栄養素として知られています。
葉酸は妊娠前から摂取することで胎児の神経管閉鎖障害を防ぐ効果があります。また、バランスの取れた食事はホルモンバランスを整え、妊娠しやすい体づくりにつながります。
【適度な運動】
妊活中は適度な運動が大切です。軽い運動を取り入れることで血行が良くなり、ホルモンバランスが整いやすくなります。ウォーキングやヨガ、ストレッチなどが特におすすめです。しかし、過度な運動は逆効果になることがあるため、無理せず、リラックスできる範囲で続けることが重要です。
【睡眠時間の確保】
十分な睡眠を確保することも妊活においては非常に大切です。
仕事が忙しいからと働きすぎて睡眠不足になっているとタイミングを取るのも難しいと思います。加えて、女性であれば月経不順になる可能性も高いです。月経が乱れると当然のこととして排卵にも問題が出てきます。あるいは内膜の状態が悪いとか、妊娠を妨げる原因になりかねません。
睡眠環境を整え、毎晩規則正しい時間に眠ることを心がけましょう。
【禁煙と飲酒制限】
妊活中はタバコを控えることが重要です。喫煙は卵子の質や精子の質に悪影響を与え、妊娠を難しくする原因になります。また、アルコールも妊娠に影響を与える可能性があるため、飲みすぎにはくれぐれも注意しましょう。
排卵日に合わせたタイミング法を心がけましょう
妊活を進める中で、最も基本的な方法の一つが「タイミング法」です。タイミング法とは女性の排卵日を特定し、そのタイミングで性交渉を行う方法です。排卵日は月経周期の中で卵子が最も受精しやすい時期であり、妊娠の確率を高めるためにはこのタイミングを狙うことが重要です。タイミングを見極めるポイントは次の通りです。
【基礎体温を測る】
排卵日を特定するために有効なのが「基礎体温の測定」です。毎朝、目覚めたときに専用の体温計で測定し、その変動を記録します。排卵後に基礎体温が上がるため、そのタイミングを確認することで排卵日を予測できます。
【排卵検査薬を使う】
排卵検査薬は、尿中のLH(黄体形成ホルモン)の濃度を測定することで、排卵が近づいていることを知らせてくれます。排卵検査薬を使うことで、より正確に排卵日を把握することができます。排卵検査薬は薬局やインターネット通販で購入可能です。
【頸管粘液の観察】
排卵前には頸管粘液の量が増えて透明で伸びやすくなることがあります。わかりやすい言葉では、“おりもの”です。このおりものの変化を観察することで妊娠しやすい時期を特定できます。
ストレスをためない、上手に解消する
ストレスによって健康が害されることは広く知られていますが、妊娠も例外ではありません。精神的なストレスが妊娠に悪影響を与える可能性があるため、ストレス管理が非常に重要です。妊活に取り組む中で焦りや不安を感じることもあるでしょうが、なるべくリラックスできる時間を確保することが大切です。
ストレス軽減のために、以下の方法を取り入れることをおすすめします。
【深呼吸や瞑想】
日々の忙しさの中で数分間の深呼吸や瞑想を行うことで心を落ち着けることができます。
【軽い運動】
ヨガやウォーキングなどの軽い運動はリラックスしながらストレスを軽減する効果があります。
【趣味やリフレッシュ】
妊活に集中しすぎるとストレスが溜まることがあるので、趣味やリフレッシュの時間を持つことも大切です。
【カウンセリングやサポートグループ】
妊活が進まないことで心が疲れてしまうこともあります。その場合、カウンセリングや妊活サポートグループを利用することで気持ちを整理する手助けになります。
妊活は2人で協力しあう姿勢が大事
妊活を行う上で、パートナーシップの重要性は非常に大きいです。妊娠は女性だけでなく男性の協力も必要不可欠です。お互いの気持ちや体調、進行状況についてしっかりとコミュニケーションをとることが妊活を成功に導くカギとなります。
時には焦りやプレッシャーが生じることがあるかもしれませんが、その中でもお互いの気持ちを尊重し合いながら、時にはリフレッシュする時間を持つことも重要です。たとえば妊活から少し離れて外出をしたり、一緒に趣味を楽しむことで心の余裕を取り戻すことができるでしょう。苦しい時も共に手を取り合って歩むことで、より強い絆が育まれるはずです。
妊活をしてダメなら不妊治療へ
妊活を続けても結果が出ない場合、不妊治療を検討することが次のステップです。妊活はあくまで自然妊娠を目指して行うものですが、それでも妊娠に至らない場合、医学的なサポートが必要になることがあります。特に妊娠を望んでから1年以上経過しても妊娠しない場合、不妊症と診断されることが一般的です。
たとえば妊活でタイミング法を続けてきても妊娠しない場合、何かしら受精を妨げている要因が考えられます。卵子の問題かもしれないし、卵管の問題かもしれないし、内膜の問題かもしれない。あるいは卵子と精子の相性の問題かもしれないし、精子に問題があるのかもしれない。こうした場合、いくらタイミングを合わせても妊娠しません。医学的なサポートが不可欠なわけです。
不妊治療に進むタイミングは人それぞれですが、早期に専門の医師に相談することで、適切な治療法を選択し、妊娠の可能性を高めることができます。妊娠は年齢とも深く関係しているので35歳以上なら早めの受診をおすすめします。早いスタートが妊娠への近道になります。
とくおかレディース
徳岡 晋 先生

経歴
防衛医科大学校卒業
同校産婦人科学講座入局
防衛医科大学校附属病院にて臨床研修
自衛隊中央病院(三宿)産婦人科勤務
防衛医科大学校医学研究科(医学博士取得課程)入学
学位(医学博士)取得(平成12年)
平成12年 木場公園クリニック (不妊症専門) 勤務
とくおかレディースクリニック開設
資格
日本生殖医学会 認定生殖医療専門医
日本産科婦人科学会 認定産婦人科専門医