不妊治療の先生に聞いてみた

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モチベーションを切らさずに治療を!そのためにオンライン診療と検査を 上手く活用して妊娠を目指す。
【オーク住吉産婦人科
 オーク梅田レディースクリニック
 オーク銀座レディースクリニック
 林 輝美 先生】

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体外受精をはじめ、妊娠に関わるさまざまな医療を提供しているオーク梅田レディースクリニック。最近はオンライン診療を充実させるなど、より多くの方にとって治療を受けやすい体制をさらに充実させ、整えています。そんな最新の診療状況について伺いました。


毎日複数のドクターがオンライン診療に対応

◉貴院の診療で特徴的だと思うものについて教えてください。

当院では初診や相談などにはオンライン診療を取り入れています。毎日、朝から夕方まで2~3名の医師がオンライン診療に対応しています。外来だと次に待っている患者さまがいらっしゃるので、「最後にひとつ聞きたいんですけどいいですか?」と言われても、十分に時間をかけて説明するのが難しかったりします。その点、オンラインなら1枠15分、ご主人と2人で受ける場合は30分、担当の医師がしっかり丁寧に説明したり、質問にお答えすることができます。もちろん、その記録は他の医師にも共有されて以降の診療に引き継がれます。

例えば、今までどこでどんな治療を受けてきたのか、どこが上手くいっていないのかなど、これまでの状況、経緯を一通り伺ったうえで整理して残しておくのです。こうして治療の経過をみると「〇〇の検査が抜けているから一度やってみましょうか?」というようなアドバイスができます。

他にも治療の流れや治療法によるコストの違い、保険でできること、保険のメリット、デメリットなど治療全般について説明していきます。オンラインで集中して患者さまのお話を聞き、こちらからも丁寧に説明することで、患者さまに合った治療を選択できると感じています。

治療プランについては、いくつかの案を提案します。タイミング療法から始めていくのか、年齢的には体外受精からが望ましいのか、もちろん今までの治療歴から次は体外受精に進んだほうがいいですよ、といったふうに選択肢をお伝えして、ご夫婦で考えてもらう時間を取ります。

そしてオンライン中に来院予約を取ります。外来でするのは主に超音波検査とAMHの検査です。超音波で子宮や卵巣に問題がないかを確認するのと併せて、卵巣予備能をチェックします。

丁寧に治療プランを立てることでその後の治療がスムーズに

◉治療プランはどの段階で決定するのですか?

来院から1週間後くらいに再びオンライン診療をして、検査結果をお伝えします。「AMHの数値が低かったので体外受精を急いだほうがいいですね」とか「タイミングを何回かやって結果が出なかったら、人工授精にステップアップしましょうか」など、検査結果をもとに、これから何をしたほうがいいかの提案をしつつ、ご夫婦のご希望をうかがいます。

最初は体外受精に消極的だったご夫婦でも、お二人でじっくり話し合ったり、こちらからの説明や検査結果から「体外受精をしようと思います」というように変わることもめずらしくありません。

年齢や治療歴から体外受精が適していると思われる場合でも、やはり患者さまのお気持ち、希望に寄り添うことを忘れてはいけませんよね。最初から体外受精ありきで話を進められて、気づいたら治療が始まっていたというようなことを避けるためにも、最初のオンラインから検査、そして最終的に治療プランを決定するといった流れで治療に入っていくのが、患者さまにとってもこちら側にとっても良いと感じています。

仮に体外受精をするとなったら、「このタイミングで注射をして、飲み薬はここで飲んで…」というように、治療の流れを改めて細かく説明します。卵胞チェックの日については採卵までに2回が理想で、1回目は月経開始6日目が目安ですが、都合が悪かったら1日前後しても構いません。遠方の患者さまには、あらかじめ近くのクリニックをご自身で見つけていただき、「遠隔紹介状」を送付して近くでチェックしてもらうことも可能です。

採卵日についても目安はありますが、難しかったら後ろにずらすこともできますといった説明をします。そして「生理が来たら電話をしてくださいね」とお伝えして、注射と飲み薬をご自宅宛てに発送します。

治療を進めていく中でわからないこと、困ったことがあればヘルプデスクが対応してお答えしています。

オンラインでは患者さまとしっかり話ができるので、患者さま自身が治療を続けるモチベーションにつながっていると感じることもあります。

30代での体外受精が増加妊娠までがスピーディ

◉現在は体外受精を希望される患者さまが多いのでしょうか?

やはり保険の影響は大きいですね。以前は体外受精をしたくても経済的に難しいという方も少なくありませんでした。特に30代だとタイミングや人工授精を繰り返すご夫婦も多かったのですが、今は早いです。タイミングを1回だけやって妊娠しなかったら「次は体外受精にします」というご夫婦もいて、妊娠されるのも早いです。1回採卵をしたら次週期以降は移植をしていくのですが、30代前半だと移植3回までに妊娠される方が多いですから、残った胚は凍結して卒院していきます。そして次のお子さま希望にまた来院される流れですね。

30代前半の方は初診から妊娠が早いのに対して40代の方はどうしても長くなってしまう傾向があります。 体外受精をするのはもともと40代の方がメインでしたが、今は30代半ばくらいの方が多くなってきています。

30代前半となると以前はめずらしかったのですが、今は普通です。あとは43歳になったら保険適用が終わるので、41、42歳の方たちが「やるなら今しかない」みたいな感じで体外受精をされるケースも多いです。

タイミングなら3周期で妊娠を目指す

◉逆にタイミングを希望される方もいらっしゃいますか?

最初はタイミングを希望される方もいます。ただ治療を続けるうちにしんどさを感じるようです。というのもタイミングはまさにタイミングが重要で融通がきかないんです。「この日に卵胞の大きさをチェックしますよ」といっても「都合が悪い…」とやっているうちに排卵してしまったと。体外受精なら薬で排卵しないようにしているので、「土日は無理だから月曜に行きます」と言われたら「じゃあ月曜日にしましょう」と折り合いをつけられるのですが、タイミングと人工授精はタイミングを合わせないといけない。

1週間後に来てくださいと言われたら1週間後でないとダメなんです。ですから、繰り返すうちに疲れてくるのだと思います。

上にお子さまがいたり仕事で忙しかったりすると「指示された日に来院」というのがストレスになってきそうです。治療に時間がかかるとモチベーションも段々下がってきます。何回か続けるうちに、体力と時間、経済的なことなどを考えて「体外受精をやってみたい」と決断する方が多いように思います。

こちらとしてもタイミングをされる方には「3周期くらいの間に妊娠を目指しましょう」と合言葉のように伝えています。まれに40代でもタイミングを希望される方もいらっしゃるのですが、「卵が一緒に年をとっていくことを忘れないでね」と伝えます。もちろんタイミングで妊娠する可能性もゼロではありませんが、体外受精と比べたら妊娠の確率は低くなります。何度もタイミングを繰り返して結局妊娠しなかった時に費やした時間やお金、労力を悔んだりしないか。あとから振り返って、「やっぱり最初から体外受精をしておけばよかった」とおっしゃる方もいます。

子宮内膜生検後の移植で妊娠率が3倍に

◉おすすめの検査についても教えてください。

胚移植を2~3回くらい繰り返しても結果が出なかったら、検査をおすすめすることもあります。着床しない原因を探るというのでしょうか。1回目の移植が終わった後に何か気になることはなかったか、2回目は…と治療の過程を振り返るのです。例えば「移植した後にお腹が痛かった」「出血があった」というような話があったら、「子宮の中を1回チェックしてみましょうか」と提案します。子宮の中を直接確認できるファイバースコープ(子宮鏡)を使って、ポリープや筋腫の有無などを調べます。この検査ではエコーでは見つけにくい小さな病変を見つけることも可能です。痛みもないし、子宮の中を1度見ておくのもいいと思います。

子宮内膜生検も時々おすすめする検査です。この検査は内膜が着床可能な状態にあるかどうかを組織を採取して確認するものなのですが、検査をする時に内膜に傷がつきます。この傷を修復する際に着床に関わる物質が分泌されると考えられており、検査後2周期くらいは着床率が上がるんです。

ですから移植する胚が残っている患者さまには「内膜生検をしてみますか?」とおすすめすることがあります。そして次周期に移植をします。 当院では内膜生検をせずに移植した場合より、約3倍も高い妊娠率が得られています。

こちらから提案する検査はこの子宮鏡と内膜生検の2つがメインです。他にもいろいろありますが、検査をすべてやっていたら高額になってしまいます。ですから患者さまに合っていそうだと思われるもの、もしくは患者さまがやってみたいと思われるものを1つずつやっていくことが多いです。検査項目についてはオンライン診療の際に説明するのですが、患者さまもご自身でいろいろ調べられていて「ERA(子宮内膜着床能検査)をやってみたい」「ALICE(感染性慢性子宮内膜炎検査)をやってみたい」とリクエストされることもあります。移植を淡々と繰り返す方は少なくて、移植が終わるごとに検査を提案したり、治療法を少し変えたりして、次の移植に移るケースも多いです。

検査をしたら必ず妊娠に結びつく、不妊の原因がわかるというわけではありません。やみくもに検査をするよりもしっかり睡眠を取って、規則正しい生活を送って、必要に応じてサプリを飲んでというように、いわゆる普通のことが一番大事なのは言うまでもありません。

ただ、同じ治療を漫然と繰り返していると行き詰ってしまうというか、治療に対するモチベーションを保つのが難しいと感じます。そんな時に検査で何かしらわかったり、チャレンジすることで、前向きに治療を続けられるというのも大事なことだと感じます。何度胚移植をしても1度も着床したことのなかった方が、例え出産にはいたらなくても着床したとなったら「次はうまくいくかも!」と希望を持って頑張っていけるんですよね。

PRPを入れたら内膜が薄いままで妊娠

◉内膜生検のように、最近注目している方法はありますか?

子宮内膜が厚くならない方、エストロゲンのお薬を足してもまったく厚くならない方にPRPを入れたら妊娠されたんです。驚いたのが内膜の厚さはまったく変わらないまま、5ミリ程度の薄さで妊娠したんです。現在までに数名の方が妊娠されています。

これまで内膜の厚さは大事だと言われてきましたから、移植前に内膜が薄いままでは着床は困難かと思っていたのですが、患者さまに教えられた例ですね。

検査を受けることで治療へのモチベーションが高まる

◉日々、治療をしていて感じていることは?

検査の話もしましたが、検査をすると「もしかしてこれが妊娠を妨げているのかも」と引っかかることもあります。ですから、患者さまには検査結果をもとに「次回の移植ではこの薬を使ってみましょう」などと説明するのですが、それが必ずしも妊娠の突破口になるわけではありません。妊娠して卒院されていった患者さまも、もしいろいろな検査をしていたら、あれこれ引っかかっていたかもしれません。

ではどうして妊娠したのかという話になると、多くは胚のめぐりあわせなのだと思います。胚移植5回目で妊娠したとして、1回目と5回目の移植、同じことをしたのだけど5回目の胚が良かったと。だったら何もしないで同じように移植を繰り返せばいいじゃないかと思われるかもしれませんが、同じことを淡々と繰り返すのはしんどいんですよ。

このまま妊娠できないような気もしてきてしまうので、「ちょっとこの検査やってみましょうか」と提案することで、ご本人のモチベーションをあげることも、治療を続ける上でとても大切だと感じます。もちろん検査で引っかかる要素を1個ずつ潰していったほうが妊娠に近づくでしょうから、検査自体も決して無駄ではないと思っています。

妊娠は胚とのめぐりあわせ、年齢とともに確率は低下する

◉移植の際は着床しそうな良好胚からしていると思いますが…。

見た目から着床する胚を見抜ければいいのですが、きれいな胚だから着床するとは限らなくて、「えっ、この胚で妊娠したの!?」というような胚だったりすることもめずらしくありません。「この胚を廃棄しようかといっていたけど、残しておいてよかったね」というような……。

ですから、まさにめぐりあわせで、そのめぐりあわせが1回目で来るのか5回目で来るのかという、その違いなのだと感じます。ただし、年齢とともに確率は低下して、40歳前後になると、妊娠に結びつくのは5、6個に1個程度だと感じます。

胚の基準については進んでいるところもあるのですが、まだ未知の部分もあるので、妊娠に結びつく胚とめぐりあうまでモチベーションを保って、やる気を失わずに治療を続けることが妊娠の鍵といえます。私たち医師や病院スタッフも患者さまが前向きに治療に臨めるように全力でサポートしていきますので、一緒に頑張っていきましょう。

医療法人オーク会
林 輝美 先生

経歴

兵庫医科大学病院産婦人科学教室より宝塚市民病院へ。腹腔鏡手術の第一人者である伊熊健一郎医師のもとで非常に多数の腹腔鏡手術を行う。当時革新的だった「先天性腟欠損症に対するS状結腸を用いた腹腔鏡下造腟術」を発表。国立篠山病院、神戸アドベンチスト病院でその腕を振るう。

資格

日本生殖医学会生殖医療専門医
日本産科婦人科学会専門医
母体保護法指定医

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