不妊治療の先生に聞いてみた

funinclinic

公開日

原因不明不妊、二人目不妊に深く関わっている年齢。
治療が長引くほど妊娠の可能性は低下します。 
【とくおかレディースクリニック 徳岡 晋 先生】

記事画像

2005年、東京目黒区の都立大学駅近くにとくおかレディースクリニックを開業。患者さまとのコミュニケーションを大切にしながら、不妊治療専門のクリニックとして、できるだけストレスや不安が少ない診療を心がけています。

タイミング療法から体外受精、顕微授精まで、不妊治療を一貫して行っているとくおかレディースクリニック。これまでの診療から原因不明といわれる不妊にはいくつかの要素が関連しているけれど、大きな要因といえるのは『年齢』だと、徳岡先生は語ります。 昨今、よく耳にする二人目不妊にも深く関わっているのが年齢です。
今回は原因不明不妊や二人目不妊に深く関係している年齢因子や、年齢を踏まえ、短期間で結果を得るための治療の進め方などについてお話をうかがいました。

全体の半分にも及ぶ、原因不明不妊の割合

以前から原因不明不妊の割合は多いと言われていますが、おおよそ40%程度、年齢因子を含めると50%程度になるでしょうか。原因不明をどこまでと捉えるかで割合は変わってくると思います。

逆に原因がはっきり分かりやすいものとして、男性側に原因のある男性不妊、排卵に問題のある排卵障害、卵管が両方ともふさがっている卵管閉塞、精子の動きを止めてしまう抗精子抗体などが挙げられます。当院の患者さまでいうと、男性不妊の割合は15~20%程度、女性不妊の割合は20~25%程度ですから、原因のわかる不妊は半分に満たないということになります。言い換えれば、半分以上が原因不明不妊になるわけです。

早めのステップアップで短期間での妊娠を目指す

原因不明の患者さまの治療期間は個々で異なり幅がありますが、なるべく短期間での妊娠を目指しています。 というのも、当院は体外受精や顕微授精といった高度生殖医療を実施しているクリニックですから、一般不妊治療といわれるタイミング療法や人工授精を長期にわたって繰り返すことはまずありません。

最近は治療を受ける女性の年齢が高くなっていますから、できる限り早い段階での妊娠を目指しており、タイミング療法や人工授精での治療期間は初診から5ヶ月を目安にしています。ただし、5~6周期をかけてタイミング療法や人工授精をしても、妊娠にいたるのは1~2割程度と決して多くはありません。

患者さまとしても、「仕事と治療の両立が難しい」「年齢が高くなってきた」といった理由から、なるべく短期間で治療を終えたいという方が大半です。そのため、半年弱タイミングや人工授精をしたら、体外受精に移行する方が多く見られます。もちろん、年齢や治療歴を理由に、最初から体外受精を選択される患者さまもいらっしゃいます。

来院のタイミングはご夫婦それぞれで、「妊娠を希望して1年ほど自分たちで頑張ってみたけれど妊娠しない」であるとか「39歳で結婚したので急いで子どもがほしい」とか、「結婚数ヶ月だけれど治療を受けにきた」とか、さまざまです。

46歳で妊娠反応も鍵を握るのはAMHの値

当院にみえる患者さまは、初めて不妊治療を受けるという方が多いのですが、他院から転院してくる方もいらっしゃいます。以前治療していた病院では「採卵できなかった」とか「採卵はできたけれど胚が得られず移植できなかった」といった方たちなのですが、転院されて妊娠される方も結構いらっしゃいます。最近も40代の患者さまに続けて妊娠反応が出ました。他院では移植できなかったという、46歳の方が1回目の移植で陽性反応が出たケースもあります。

こういう患者さまを見るにつれ、原因不明とはいえ、長々と治療に時間をかけるのは得策でないと感じます。あえて原因をあげるとしたら、年齢による卵子の質の低下、卵子の数の減少、要は卵巣機能の低下が考えられるからです。より正確にいうなら卵巣予備能ですね。若くてもAMHの数値が1を切っている方はいらっしゃいますからね。実年齢は30代前半だとしても、AMHの数値をみると40代程度というケースも珍しくありません。ですからAMHの数値は早めに測定することをお勧めします。当院でも初診で必ずお伝えしていますし、ほぼ全員の方がAMH値を測定されます。

30代後半が主流、1年以内での妊娠を目指す

体外受精の保険適用がスタートして以降、保険診療の方が8~9割と自費診療に比べて圧倒的に高いです。年齢層でいうと、30代前半の若い方たちの来院も増えましたが、大半を占めるのは以前と変わらず30代後半~40代の方たちです。年齢を考えると、治療に時間をかければかけるだけ妊娠は難しくなってしまいます。

当院では初診から1年以内での卒院(妊娠)を目指していますが、原因不明不妊も同様で、タイミングや人工授精で結果が出なかったら、早い段階で体外受精や顕微授精に切り替えることをお勧めします。もちろん、患者さまの希望は尊重しますが、AMHの数値や治療歴などを踏まえると、時間の猶予はあまりないと考えられるケースが大半です。中には、少しゆっくり治療をしたいとおっしゃる方たちもいるのですが、治療をするうちに、ゆっくりしていて結果が出るものではないと理解されるようです。同じ治療を繰返しても妊娠率が高まることはありませんからね。それどころか年齢が高くなればなるほど妊娠は難しくなりますから、最終的には体外受精を希望される方が多いです。

卵と精子が出合えていないキャッチアップ障害も一因

原因不明不妊に関係していると考えられるのは卵の数の減少と質の低下ですが、他にキャッチアップ障害も一因と考えられます。排卵は確かにしているし、卵管に癒着も見られない、排卵後の黄体ホルモン値も正常なのに、人工授精をしても妊娠にいたらない。こういうケースが意外に多いのですが、この場合、着床障害や受精障害よりもキャッチアップ障害が原因なのでは、と考えられます。その証拠というか、体外受精や顕微授精にステップアップすると妊娠されますからね。着床や受精以前に卵子と精子が出合っていない可能性が高いです。

二人目不妊も年齢が関係している、治療のスピードが重要

二人目不妊の場合、一人目は自然に授かったけれど二人目がなかなか授からないというケースと、一人目も不妊治療をして授かったというケースに分かれますが、当院に来られる患者さまは、一人目も不妊治療で授かったという方が多いです。この場合、お一人目の出産から1年半程で来院されるケースが多いように感じます。ご自分の年齢を考慮して産後1年ほどで来院される方もいらっしゃいます。

この場合、早く治療を進めて早く授かりたいという方が大半なので、最初から体外受精を選択される方が多いです。中には1~2周期はタイミング療法で試したいという方もいらっしゃいます。排卵誘発をしてタイミング指導をして、という形ですね。ただし、この方法で妊娠されるかというと、確率はかなり低いのであまりお勧めはしません。その後、体外受精にステップアップして胚移植をすると、1~2回で妊娠されますので、タイミング療法は患者さまのご希望があったときに対応しています。

一方、一人目は自然に妊娠したけれど二人目がなかなかできないと来院される方は、「一人目は普通にできたのにどうしてできないの?」と疑問に思われるようです。ですが答えは明白で、深く関係しているのが年齢です。一人目のお子さまを出産した時よりも年齢を重ねたことで、卵の染色体異常が増えるなど卵の質が低下、数も減っているわけです。となれば、大切なのは治療に時間をかけすぎないこと。中には「三人目もほしい」とおっしゃる方もいますからね。何よりも早めに治療をスタートして、なるべく時間をかけずに妊娠を目指すことが大切です。

二人目不妊の治療をするときは、一から検査をするのではなく、治療に必要な検査のみをします。仮に体外受精なら卵管検査などは必要ありませんから、感染症の検査などをして治療に入ります。いずれにせよ時間重視で治療するように努めています。

夫婦で勉強会に参加すると治療がスムーズに進みやすい

治療をスピーディに進めるうえでポイントになるのが、不妊治療への理解です。当院では月に1回、第1土曜日もしくは第2土曜日の14時から勉強会を開催しているのですが、あらかじめ勉強会に参加した方は治療の進みが早い傾向が見られます。それもご夫婦そろって参加されると、治療がスムーズに進みやすいです。というのも、不妊治療を受ける際にご主人の理解が得られずに治療を進められないケースが少なくないからです。「わざわざ人工授精をしなくてもタイミングで様子を見ればいいじゃない」というように治療にストップをかけることも珍しくありません。保険制度がスタートしたり、卵子凍結への助成が実施されたり、妊娠と年齢は深く関係していると言われている中でも、やはり不妊治療に抵抗を示す男性はいます。

ですが、妊娠には夫婦双方の協力が必要不可欠ですから、まずは不妊治療について理解を深められるよう、勉強会には、ご夫婦で参加していただきたいです。

患者さまの期待にそえるよう、1回の治療に全力を注いで

日々、診療に当たっていて、患者さまの「早く子どもを授かりたい」という気持ちを強く感じます。お一人でいいという方もいれば、二人、三人ほしいという方もいらっしゃいます。私たちとしては、いかに患者さまの期待に応えるか。それも、なるべく少ない移植回数、採卵回数で結果を出すか、いかに短期間で妊娠にこぎつけるかに力を注いでいます。一球入魂というと伝わりやすいでしょうか。とにかく1回1回、真剣に治療に当たっていますので、患者さまも早めに治療をスタートさせていただけたらと思います。

とくおかレディース
徳岡 晋 先生

経歴

  •  
  • 防衛医科大学校卒業
  •  
  • 同校産婦人科学講座入局
  •  
  • 防衛医科大学校附属病院にて臨床研修
  •  
  • 自衛隊中央病院(三宿)産婦人科勤務
  •  
  • 防衛医科大学校医学研究科(医学博士取得課程)入学
  •  
  • 学位(医学博士)取得(平成12年)
  •  
  • 平成12年 木場公園クリニック (不妊症専門) 勤務
  •  
  • とくおかレディースクリニック開設

資格

日本生殖医学会 認定生殖医療専門医
日本産科婦人科学会 認定産婦人科専門医

ホームページを開く

最新記事