公開日
安全と質の高い施設環境を目指した大宮ARTクリニック。
その誕生には皆の熱き思いがありました。
【大宮ARTクリニック 己斐 秀樹 先生】
埼玉は大宮駅から徒歩1分。線路を見下ろし、遠くの山々を眺めることのできる大宮情報文化センター13階に昨年末、期待のクリニックが誕生しました。それが『大宮ARTクリニック』。安心で安全なお産を掲げ、開院30年以上の歴史のある成田レディスクリニックの分院です。
院長の己斐秀樹先生はARTに対する熱い思いと、今までの立ち上げ経験を十分活かし、満を持して今回のクリニック立ち上げとなります。
さて、そこには熱き思いのスタッフや志を同じくする企業(アステック)担当者との信頼関係が欠かせなかったようです。
全ては患者さんのために!
その思いで臨んだ新設ARTクリニック。そこには、どのような話があったのでしょう。
早速、伺うことにしました。
患者ニーズを満たすためのクリニックが出来ました
院長の己斐先生は話します。
不妊治療施設に求められていることは、今も昔も変わらないと考えています。その一つが安全であること。震災などでダメージを受けないよう安全面での配慮が必要です。次に患者さまにとって納得のゆく説明が受けられること。そして、3つ目はプライバシーへの配慮です。このクリニックを立ち上げるときにも、これらのことを十分に考えて設計しました。
安全面では、患者さまからお預かりした生殖細胞(卵子、精子、胚)へのリスクを最小限に抑えるよう、培養室の安全を第一に掲げました。その点、特に停電に対して、このビルは地域の防災活動の拠点となる施設になっており、万一の際には自家発電により電力が供給されるため培養機器の停止が回避でき安心です。
次に患者さまに対する説明ですが、日常診療の中で、治療や検査結果をしっかり説明する以外に、動画や説明書を活用しています。また、患者さまに看護師が積極的に寄り添わせていただくことで、患者さまのニーズの把握と説明を十分に行えるよう努めています。
また当院は診察室を多く準備しているため、今後にはなりますが、複数の医師を配置することで患者さまの治療に関する選択肢を増やし、またお待ちいただく時間も極力減らし、患者さまに寄り添った診察をすることを目指しています。
プライバシーの配慮についても力をいれました。お二人目を希望して来院される患者さまのために、子ども用プレイルームや個室を完備しています。各患者さまニーズを考慮し、可能な限りの待合スペースの個別化、患者さまの治療内容による診察室の使い分けなど、視線を気にせず通院していただける環境に努めました。
他にも、患者さま第一の施設設計を心がけた点として、実際に患者さまと接する機会の多い看護師が、患者さまと接する場所へ動きやすいように、ナースステーションを施設の中心に置きました。医師が必要な際は、医師自身、各診察室を移動することで患者さまの負担を無くすよう設計をしました。
朝7時半から診察開始
仕事前に通院が可能!
それから、働きながら通院できるように朝7時半から診察をしています。大宮駅は交通の便も良く都内や別地域で働く人も多くいます。その方々が仕事帰りに不妊治療を受けるのには時間的に高いハードルがあります。夜遅くまでの診療も検討しましたが、診療時間を気にしながら仕事をする患者さまの心の負担と、従業員の負担も考えて新しい取り組みをしました。それが7時半からの朝診です。
これにより、仕事前に通院する選択肢が増えました。また当院近隣にオフィスのある患者さまも仕事前に診療や超音波検査、薬をお渡しすることもでき、個人の時間を有効に使っていただくことが可能です。
医師と胚培養士の信頼とそれぞれの強い思い
医師も胚培養士も患者さまに貢献したいという熱い思いを持っています。その中でお互いが常に刺激し合える関係性が必要だと思っています。
体外受精・顕微授精・胚移植で妊娠するためには良好な培養成績、その胚をしっかり移植することが大切です。良好な成績を出すためにはスタッフ一同の協力と質が問われます。
医師は患者さまに合わせた採卵スケジュールで良い卵子を採卵することに全力を注ぎます。その後、最適な培養環境と胚培養士の技術が良好胚獲得には不可欠になります。移植に関しては医師の技術が問われます。これらが十分機能することで妊娠成績が上がり、また相互の信頼が生じます。
医師も胚培養士もお互い切磋琢磨して技術を磨き、知識を常に広めることで患者さまに貢献できます。そういった意味でそれぞれの視点から常にモチベーションを高め、刺激し合っています。
その中でまずは技術を裏付けるために、培養室の機能と安全性を第一に考え、培養室の設計と機器の整備を今回のクリニック設計の要と考えました。
もちろん、患者さまの治療を支える看護師、助手、事務職員を含めたチーム全員の力が生殖医療には大切です。培養室機器以外にも素晴らしい設備とスタッフが集結したクリニックが出来たことで順調に妊娠成績が出ています。このことをより多くの患者さまに知って頂き、是非当クリニックにおいで頂きたいと思っています。
安全で働きやすく、将来に向けて長く使える培養室を作り上げよう!
培養室長の村松さんは話します。
以前、全国でも有数な治療実績を持つクリニックで己斐先生とは一緒に仕事をさせていただいており、目標や方針などは共有できています。そのため、院長から培養室の設計を一任された時も、安全性への配慮を提示されただけでした。
設計にあたり、まずは自分が動きやすい培養室をイメージし、それであれば他のスタッフも動きやすいだろうと考えました。
その具現化のために、昔からお付き合いがあり、こちらの要望を伝えれば何かと理解してくれるアステックの名田さんに、統括して培養室を設計してもらうことにしました。
理由として、自分一人が培養室を把握している状態では、何かトラブルがあったり、自分がもしも退いたりした時に、培養室の運営が困難になってしまうため、患者さまのためにも迅速に管理が継承できることが望ましいと考えたからです。
その目的がしっかり共有できる方であれば、その人と組むのが一番安全ですし、名田さんであれば自社製品だけでなく、不妊治療における様々な機器や環境に対しても視野が広いため、成績の出るクリニック設計を心がけてくれます。それも企業理念に基づいてのことといいますから、より信頼も高まります。さらに、ベースのメーカーさんを置くことで、メンテナンスの際にそれぞれの機器の状態が履歴に残りますから、トラブル時に連絡をすればすぐに対応してもらえる安心感もあります。
設計コンセプトとして、培養室内の見通しが良いこと。動線が良く、それぞれの操作性も良いこと。高い位置に物を配置しないようにすること。そして培養室内クリーン度が基準値を超える空調設備、設置位置を考慮して設計しました。さらに精液処理ブースを培養室内に配置したことで、結果的にコンパクトにまとまり、働くスタッフの視認性も良く、とても満足しています。チーム皆の距離が縮まり、一体感が強まったこともあり、培養室の成績は好調です。
患者さまが通いたいと思えるクリニックを作りたい!
みなさん、アステックはご存知でしょうか?
今回、大宮ARTクリニックの立ち上げから己斐先生と村松培養室長とタッグを組んでいるアステックの名田さんにもお話を伺いました。
一般の方はあまり知ることのない、培養室内の機器や資材を製造し、また、新たに現場の要望から新製品の開発も手掛け、広く培養業務のお手伝いをする日本の企業です。
培養室の立ち上げからお手伝いさせて頂く際は、まず、胚培養士の方々が安心して日々の作業を実施出来る事を第一に心掛け、提案しています。作業中の導線を考慮した使いやすい機器の配置や、最新の弊社機器をご提案する事で、日々の作業をストレスなく実施頂けると思います。同時に、非常時の備えとして、各機器に対する耐震補強や機器の状態を常にモニタリング出来る監視システムのご提案もさせて頂きます。
これらトータルでご提案させて頂く事が、胚培養士の方々、クリニックさま、最終的には、患者さまへ安心と安全をお届け出来ると考えております。
クリニックに大切なこと
診療で大切なこと
今回の取材では、不妊治療(生殖補助医療)専門のクリニック誕生と、そこに関わる医師、胚培養士、企業、それぞれの想いに触れることができ、貴重なお話を聞くことができました。最後に己斐先生に、患者さまへのメッセージを伺いました。
私たちは、患者さまのニーズを満たすクリニックになりたいと思っています。まだ開院して間もないため、女性医師の配置や男性不妊外来など患者さまニーズにお応え出来ていない部分が今後の課題です。科学的な根拠に基づいた医療を安全に提供し、少しでも多くの患者さまに妊娠という結果をお届けし、患者さまの信頼を得られるようにスタッフ一同地道に診療を続けていきたいです。
大宮ARTクリニック
己斐 秀樹 先生
経歴
東京医科歯科大学医学部卒業
東京医科歯科大学医学部大学院卒業
東京医科歯科大学産婦人科助手
米国ペンシルベニア大学 研究員
亀田メディカルセンター不妊部長
田園都市レディスクリニック二子玉川副院長
成田レディスクリニック副院長
現 大宮ARTクリニック院長
資格
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
日本生殖医学会認定 生殖医療専門医
東京医科歯科大学 臨床教授