不妊治療の先生に聞いてみた

funinclinic

公開日

PRP治療で赤ちゃんを授かる道へ
【アイブイエフ詠田クリニック 詠田 真由 先生】

記事画像

赤ちゃんを授かる
どうして、その道が遠いの?

「なかなか妊娠しないね」とふたりで悩んではじめた不妊治療。体外受精なら! この治療周期で! と期待を持っても、赤ちゃんへとたどりつかないと、途方に暮れて、もうダメなのかもしれないと思うこともあるでしょう。

その気持ちを立て直して次の治療周期に臨む場合、治療周期を見直してみること、または胚の染色体数を調べるPGTーA、着床の窓の検査や不育症の検査などを行うことで原因や要因が見つかり、妊娠して、赤ちゃんが授かるケースもあります。しかし、それでも赤ちゃんが授からないカップルもいます。

そこで、今回は「いろいろな検査も治療もしたけど、赤ちゃんが授からない! どうしたらいいの?」という疑問を持って、福岡市中央区にあるアイブイエフ詠田クリニックの詠田真由先生を訪ねました。

これだけやっても妊娠しない
でも、まだ方法はある

私たちのクリニックでは、赤ちゃんを待ち望んで体外受精に臨むカップルの多くに赤ちゃんが授かっています。ただ、初回の体外受精では叶わず、数回の胚移植をして授かるカップルもいます。

2022年4月からは、体外受精にも保険が適用されるようになり、40歳未満は胚移植6回、43歳未満は胚移植3回まで保険が適用されます。年齢が高くなれば卵子の質の低下などにより妊娠が難しかったり、流産になったりするケースもありますが、保険が適用される回数以内に妊娠が成立するカップルが多くいます。しかし、なかにはなかなか妊娠が難しいカップルもいて、これまでの道のりと治療への期待から心にも、体にも、経済的にも大きな負担がかかってくることと思います。

私たちは、それぞれのカップルに最適な治療を提供していますが、その治療で赤ちゃんが授かるカップルもいれば、妊娠が成立しないカップルもいます。妊娠しなかった場合には、治療周期を見直し、次の治療周期はどのようにしたらいいのかを検討してご提案し、患者さんと相談して次の治療周期をはじめます。不妊治療は、最適と考えられる治療でも必ず妊娠するという治療ではないことが、カップルにとって、また私たちにとっても難しいところです。しかし、赤ちゃんを授かりたいとカップルが望み、私たちの助けを必要としている以上、何とかして赤ちゃんを授かるようにと日々の治療に努めています。

だから、どうか諦めないでください。まだ方法はあります。

何度も胚移植しているのに妊娠しない理由は?

何度も胚移植をしているのに妊娠しないのには、いくつかの理由が考えられます。それは、胚に染色体の数の問題があるケース、子宮に問題のあるケース、母体の免疫に問題があるケースなどです。

胚の染色体の数については、PGTーA(着床前胚染色体異数性検査)を行い、染色体の数に問題のない胚を移植することで妊娠を目指します。

子宮の問題については、子宮内膜がなかなか厚くならない人もいますが、そればかりが問題ではないので、子宮鏡検査や慢性子宮内膜炎、また着床の窓の検査(ERA検査)、などの検査を行います。そこで何らかの問題が見つかれば治療し、着床の窓を合わせるなどして胚移植を行い妊娠を目指します。

母体の免疫の問題については、不育症検査を行い、必要な治療をして胚移植に臨み、妊娠を目指します。

このような検査や治療を行って、胚移植をした結果、赤ちゃんが授かるカップルも多くいます。また、残念ながら流産になってしまうカップルもいますが、母体に胚を受け入れる環境が整っていることがわかります。

流産の原因の1つとして、胚の染色体の数の問題があげられます。PGTーAも100%ではなく、検査の結果が正常胚であっても、検査した細胞以外の栄養外胚葉(TE:将来赤ちゃんの胎盤になる細胞)か検査ができでない内部細胞塊(ICM:将来赤ちゃんになる細胞)に染色体の数の問題があったのではないかと考えられます。

しかし、これらの検査や治療を行っても着床すら叶わないカップルもいます。

PRP治療を患者さんへ

何度も胚移植をしているのに着床すらしない場合、胚の問題ばかりではなく、胚を受け入れる子宮に何らかの問題があるのではないかと考えられます。そのなかには、子宮内膜がなかなか厚くならない人もいますが、内膜が厚く、PGTーAで問題のなかった胚を移植しても着床しない人もいます。

それでも、諦めるわけにはいきません。

私たちがPRP治療をはじめたのは、何度も胚移植をしているのに着床しない、いわゆるかすりもしないカップルに対して「なんとかして!」という思いからでした。

PRPには、多くの成長因子が含まれていることがわかっていて、疾患のある部位にPRPを投与することで、その人自身が持つ修復力で病気やケガの改善が期待される再生医療として、産婦人科だけでなく整形外科や歯科などにも注目されています。

生殖医療でも、子宮内膜が厚くならない人の内膜が厚くなり妊娠した例、子宮内膜の厚さには特に問題はないけれど、何度胚移植をしても着床しなかった人の妊娠例など、さまざまな論文や発表、また他のクリニックでの治療実績があり、信用性の高い、有効な治療だと考え、私たちのクリニックでは2020年4月に「再生医療等提供計画」の届出が受理され、PRP治療を実施してきました。

表画像1

PRP治療という選択

PRP治療は、着床が難しいカップルが選択する治療で、2回、3回と胚移植をしても着床しない場合、PGTーAや子宮環境や不育症の検査と一緒に、PRP治療の案内もします。どれも高額な検査になりますが、高額だからと医師が遠慮して案内しないのでは、患者さんたちの選択肢が狭くなってしまうので、今、できることのあらゆる方法をお話しています。

なかには、PGTーAを受け、胚の染色体数に問題がない胚を選択肢、PRP治療も受けて胚移植するカップルもいます。

保険診療による体外受精では、胚移植回数も限られ、自由診療の時よりも焦りを感じる人もいます。また、いろいろな治療をやり尽くして転院されてくるカップルもいて、保険が適用される胚移植は最後の1回というケースもあります。患者さんは何とか妊娠したいと必死になっていますし、私たちもそれに何とかして応えたいと必死です。とくに高年齢の患者さんは、すべての検査と、PRP治療もして胚移植へ臨むケースは少なくありません。

ですが、PRP治療は現在(2023年11月)先進医療ではなく、保険診療と組み合わせて行うことができません。PRP治療は自由診療となりますが、何度も胚移植をして着床しないカップルにとっては、期待の持てる治療法だと考えています。

何度か胚移植しても着床しない場合は、早めにPRP治療を検討できるように、私たちも案内をしています。

PRP治療を実際に受けるカップルとは

PRP治療を受けるカップルは、これまでの胚移植で着床しなかったカップルです。妊娠率でいえばこれまで0%だったわけで、その後の胚移植でも同じように0%になる可能性が高いカップルだと考えられます。患者数としては多くありませんが、何度も胚移植しているのに着床しないのは、精神的に相当追い込まれていると思います。

PRP治療は、自分の血液から抽出するものですから、体内に入れても拒否反応はありません。胚移植をする周期の10日目と12日目に血液を採取して、PRPを抽出し、その日のうちに子宮へ注入します。ご自分の血液から抽出PRPには、さまざまな成長因子が含まれていて、その成長因子が子宮に作用し、子宮内膜が厚くなったり、子宮環境を整えたりすることで胚が着床しやすくなるようです。

実際には、何がどのようにいいのかは、まだわかっていないこともありますが、私たちのクリニックでは、これまで100例以上のカップルへ実施し、約1割に赤ちゃんが授かっています。

表画像1

PRP治療に期待すること

PRP治療は大変有効な治療だと考えていますが、今後、費用が安くなることと、PRPの抽出の時間がもう少し短くなること、そして先進医療として認められて患者さんがPRP治療を受けやすい環境になることを期待しています。

費用がもう少し抑えられれば、これまで医療費の面からためらっていたカップルも受けやすくなるでしょう。

また、PRPの抽出時間がもう少し短くなれば、患者さんにお待ちいただく時間が短くなりますし、1日にPRP治療を受けていただける患者さんの人数制限を緩和することもでき、患者さんにとっても、私たちにとっても治療しやすくなると考えています。

そして、先進医療として認められれば、費用的にも時間的にも治療環境も良くなることでしょう。そのためには、患者さん自身の声を届けていくことも大切だと考えています。

体外受精であっても、赤ちゃんが授かるまでの道のりは、順調なカップルもいれば、困難を極めるカップルもいます。

ただ、今は、さまざまな検査や治療法があり、困難を極めるカップルも、赤ちゃんを授かる道へつなげていくことができる方法はいくつかあります。

あきらめずに主治医に相談をしながら、より良い環境で治療を受けていただきたいと思います。

アイブイエフ詠田クリニック
詠田 真由 先生

経歴

  • 2006年
  • 九州産業大学工学部機械工学科卒業
  • 2012年
  • 藤田保健衛生大学医学部医学科卒業
  •  
  • 藤田保健衛生大学第2教育病院
  • 2015年
  • 九州大学産科婦人科
  • 2018年
  • 浜の町病院産婦人科
  • 2020年
  • 東医療センター産婦人科
  • 2021年
  • アイブイエフ詠田クリニック

資格

日本産科婦人科学会 認定産婦人科専門医
日本抗加齢学会 認定専門医

関連記事

最新記事