不妊治療の先生に聞いてみた

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PRP療法を妊娠するための有効な方法として
【おち夢クリニック名古屋 越知 正憲 先生】

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「子宮内膜へのPRP(多血小板血漿)療法」は、子宮内膜が厚くならない人を対象にした再生医療です。

「卵巣へのPRP療法」は、卵巣機能が低下しつつある人を対象にした再生医療です。

どちらも自分の血液から多血小板血漿を抽出し、子宮、または卵巣へ注入することで着床環境または卵巣機能の改善が期待できます。

現在、「子宮内膜へのPRP療法」を行える治療施設は全国で約55件、「子宮内膜へのPRP療法」と「卵巣へのPRP療法」の両方を行える治療施設は全国で17件あり、おち夢クリニック名古屋は両方を行える治療施設です。

そこで、越知正憲先生を訪ね、「子宮内膜へのPRP療法」と「卵巣へのPRP療法」の治療対象となる人やその効果や期待についてお話をお聞きしました。

PRP療法とは、どのような治療法で、なにが期待できますか。

おち夢クリニック名古屋では、「子宮内膜へのPRP(多血小板血漿)療法」は2019年9月に、「卵巣へのPRP療法」は2021年10月に厚生労働省「特定認定再生医療等委員会」より施設認定され、今日まで実施してきました。

子宮内膜へのPRP療法は、子宮内膜が厚くならない人が主な対象としています。このような人を対象とした治療方法は、これまでもさまざまありましたが、何をしても厚くならない人は一定数いて、それらの人を対象とした有効な治療法として期待されています。

私たちのクリニックでは、PRP療法によって子宮内膜の厚さが改善されるケースもありますが、あまり改善されていなくても妊娠が成立するケースもあります。子宮内膜が厚くならなくても、PRPに含まれる成長因子などの作用で着床環境が整えられ、妊娠成立に至るのではないかと考えられています。

また、卵巣機能が低下した人に対する治療については、これまで周期を逃すことなく採卵を繰り返すなどの治療を行ってきました。そのほかでは、最終手段として、なかにはドナー卵子に頼る人もいることが知られています。このようなケースを対象にPRP療法を行うことで、卵巣機能の改善、体外受精における卵子の数の増加などが期待できます。

PRPが子宮内膜や卵巣機能にどのように作用するかなど、はっきりとしたことはよくわかっていないものの、自己血から抽出されるPRPは、拒否反応などの心配もなく、安全性も高いです。

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PRP療法後、子宮や卵巣の状態に、どのような変化がみられますか。

子宮については、内膜測定時に厚くなっている人、また厚くなったとはいえないけれど状態が良くなっている人が多いです。

卵巣についても、卵巣の状態に変化が見られる人もいますし、採卵できない周期が多かった人が採卵できるようになったり、採卵数が増えたり、高かったFSH値が低くなったケースがありました。ただ、PRP療法後のAMH値が高くなるという症例は、これまでありませんでしたが、しっかりとデータを積み重ねて、またご報告したいと思います。

症例数については、子宮内膜へのPRP療法のほうが多く、厚生労働省から認定を受けた2019年以降の3年間で約88名に実施し、そのうち49名が妊娠しています(他院の患者も含む)。

子宮内膜の薄い人は、PRP療法を積極的に受けるべきでしょうか。

子宮内膜を厚くするために黄体ホルモンや卵胞ホルモンなどの薬を用いたり、血流改善の薬やサプリメントなど用いることで子宮内膜が厚くなる人もいます。内膜の薄い人の全例にPRP療法が必要なわけではありませんが、内服薬やサプリメントなどから比べるとPRP療法のほうが即効性もあり、有用性が高いと考えています。

実際に、子宮内膜が厚くならないケースや胚のグレードがいいのに着床しないケースにおけるPRP療法後の胚移植で妊娠する症例が多くあります。

そのため、初めて体外受精を受けるカップルでも、これまでの一般不妊治療や検査から子宮内膜が薄いなどの問題がある場合は、PRP療法をおススメすることもあります。

その目安になるのが、子宮内膜6mm以下で、そのほかに過去の妊娠や子宮の病気などで掻爬術を受けたことがある人、子宮筋腫や子宮内ポリープ、また帝王切開などの手術を受けた人なども注意しながら確認します。子宮内膜の厚さや形状はエコー検査で確認しますが、ケースによっては内膜の状態を子宮鏡検査でも確認して、ご提案しています。

たとえば子宮へのPRP療法を行っても内膜が厚くならず、同じ6mmだったとしても、妊娠例が多く出ていることからも、内膜の状態が良くなっている、着床環境が整えられているという感覚を持っています。

ですから、特に内膜が薄い人にはPRP療法を早めに提案することが、胚移植を何度行っても妊娠が成立しない、いわゆる着床障害であっても、短い治療期間で赤ちゃんを授かる方法の1つになると考えています。

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卵巣機能が低下している人は、どうでしょうか。

卵巣についてはAMH値が低く、FSH値が高い人、卵巣機能が低下している人にオススメしています。卵巣へのPRP療法は、すぐに効果がみられるわけではなく、また1回のPRP療法では効果がみられないこともあります。

おち夢クリニック名古屋では、現在までに4人に卵巣へのPRP療法を行っていますが、まだ移植には至っていません。

2人は現在もドラッグフリーか、クロミフェンを用いた方法で毎周期採卵を行いながら、移植胚を確保しているところです。2人とも44歳以上と高年齢で、AMH値は0.8‌ng‌/‌ml、0.5‌ng‌/‌mlでした。PRP療法以前は、なかなか採卵に至らなかった人たちですので、PRP療法の効果があったと考えていいと思います。もう1人は、0.05‌ng‌/‌mlで採卵には至っていません。

子宮内膜の薄い人、卵巣機能低下がある人でもPRP療法の適応にならないケースはありますか。

子宮内膜は、月経周期のホルモン変動によって増殖や剥離を繰り返す機能層と機能層の下、深部にある基底層の大きく2層に分けることができます。この機能層が極めて薄い場合や、掻爬術や子宮の手術などで子宮内膜に傷がつき、子宮内腔が癒着していたりすると、PRP療法を行っても子宮内膜を厚くしたり、着床環境を整えたりすることが難しくなると思います。いわゆるPRPが作用する内膜が極めて薄いケースです。

卵巣については、閉経で月経が止まってしまったケースはPRP療法を行っても、卵巣機能を取り戻すことはできないでしょう。月経初期のエコー検査で確認できる胞状卵胞数が2~3個と少ない人に対してPRP療法を行うことで発育卵胞数を5個にするというような期待はできますが、胞状卵胞がまったく確認できない人に対しては適応しないと考えています。

特に卵巣機能に大きな問題はないけれど、採卵数を増やしたい、卵子の質を良くしたいという希望まで拡大すれば、血流改善やサプリメントよりもPRP療法のほうが効果が期待できるでしょう。しかし、過剰医療になることもあります。また、そうした状態でも、排卵誘発法の工夫と高い採卵技術で採卵数を増やすことができるケースも少なくありません。

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子宮内膜の薄さや卵巣機能低下を自覚する方法はありますか。

自覚できることで全てを知るのは無理ですが、月経周期や月経の様子から気をつけてみましょう。

子宮内膜については、以前と比べて月経血量が減ったなどが1つの情報となるでしょう。また先ほども言ったように、子宮内膜の掻爬術、子宮筋腫や子宮内ポリープの手術、帝王切開術を受けたことがある人は注意が必要です。

卵巣機能については、以前と比べて月経周期が短くなってきた場合は注意しましょう。

PRP療法へ、今後期待することはありますか。

PRP療法は保険適応にならないため、体外受精に関わるすべての医療費が自己負担になります。PRP療法の医療費だけでも約16万円以上になり、体外受精全体にかかる医療費は30万円以上になってしまいます。そのため、PRP療法をご提案しても、保険診療による体外受精を選択するカップルもいます。もちろん、どのような選択をしても、できる限りのことはしますが、もう少しPRP療法の普及が進み、医療費が抑えられるようになればと期待しています。

卵巣へのPRP療法は、まだ試行錯誤ではありますが、適応するケースにはご提案しながら、治療を提供していきたいと考えています。子宮へのPRP療法は、ビタミンE剤などを服用するよりもPRP療法のほうが効果があると感じています。性生活で妊娠ができなければ、不妊治療があり、不妊治療の中でも適応する治療法を選択し、それでも妊娠できない要因が見つかったら、適応する治療法に、早い段階でアクセスして、なるべく短期間で赤ちゃんを授かることが大切だと考えています。

PRP療法もその1つです。期待することは、必要とする患者さんが受けやすい治療になるように、まずは、先進医療として認められるようになることです。そうすれば、保険診療と併用してPRP療法を受けられるようになり、患者さんは今よりも治療を受けやすくなることでしょう。

おち夢クリニック名古屋
越知 正憲 先生

経歴

  • 1983年
  • 名古屋保健衛生大学卒業
  •  
  • 同大学産婦人科学教室入局
  • 1989年
  • 藤田保健衛生大学大学院卒業
  •  
  • 聖霊病院、名古屋第一赤十字病院、八千代病院不妊センター副部長
  •  
  • 竹内病院トヨタ不妊センター所長
  • 2004年
  • 最新の設備、最先端の技術を持ったおちウイメンズクリニックを開設。
  • 2008年
  • 永遠幸グループ提携クリニックとして、名称を「おち夢クリニック名古屋」と変更し、名古屋地区最大規模の不妊治療専門クリニックとして、移転しました。
  •  
  • 現在、藤田医科大学客員講師。

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