不妊治療の先生に聞いてみた

funinclinic

公開日

子宮内膜の3大トラブルの治療法。ポリープがあったら即手術は間違い。見過ごされがちな内膜の厚さ
【明大前アートクリニック 北村 誠司 先生】

記事画像

子宮内膜のトラブルとして主なものはポリープ、粘膜下筋腫、内膜が厚くならないの3つです。細かくみると他にもあるのですが、今回はこの3つのトラブルについてお話していきます。

ポリープがあっても妊娠するケースはある
手術はタイミングを考慮して

まず、ポリープについて。子宮内膜ポリープとは子宮内膜の細胞が異常増殖を起こして子宮内にポリープができるもので、ひとつだけでなく複数できるケースもよく見られます。ポリープのほとんどが良性です。

子宮内膜ポリープはやみくもに何でも取ればいいというものではありません。軽度であれば除去しなくても妊娠するケースが多く見られるからです。ポリープのある状態で妊娠しても出産まで問題はありません。最近も10~15ミリ程度のポリープがある状態で妊娠した方がいらっしゃいました。

治療が必要になるのは、そのままだと妊娠が難しい場合、例えばポリープが多発しているとかサイズが大きいといった場合で、程度によって治療方針は変わります。
古典的な治療法として4~6ヶ月ほどホルモン剤を使用するホルモン治療があり、確かに改善もするのですが、再発しやすいというデメリットがあるため、現在はほとんど実施されなくなりました。

現在、ポリープ治療といったら切除手術がまっさきに挙げられるでしょう。手術でポリープを取り除いて子宮内をきれいな状態にすると妊娠しやすくなると期待されます。

特に体外受精で胚移植をする場合には少しでも妊娠の確率を高めるためにポリープを切除してきれいな状態にしておくことが多いです。体外受精は費用のかさむ治療ですから、患者さん自身も切除を希望されることが多いですね。

ただし、手術のタイミングは慎重に判断したいところです。というのも手術でポリープを取り除いたとしても1年や1年半ほどで再発するケースが少なくないからです。再発の可能性も踏まえて、いつ手術をするかは主治医とよく相談されることをおすすめします。

子宮の内側にできる「粘膜下筋腫」は除去してから不妊治療へ

次は粘膜下筋腫について。粘膜下筋腫とは子宮筋腫のうち子宮の内側にできる良性の腫瘍です。筋腫のできる位置によって胚の着床を妨げることもあるので治療が必要です。他に流産や早産に結びつくこともあると言われています。

粘膜下筋腫もポリープと同様に手術が一番効果的です。ホルモン治療もあるにはあるのですが、一時的に小さくなっても時間が経つとまた出てきてしまいます。また、ホルモン治療中は不妊治療ができないので時間のロスにつながりかねません。手術で筋腫を取り除いてから妊娠を目指すのがいいでしょう。

着床に必要な内膜の厚さは7ミリ以上
有効な治療法は保険適用外という現実

子宮内膜が厚くならない場合も妊娠には結びつきません。胚が着床するのに必要な内膜の厚さは7ミリ以上と言われており、妊娠を目指すうえで重要なポイントです。そのため以前はご自身の内膜の厚さを心配される患者さんは多くいらっしゃいました。ですが現在、内膜を厚くするのに有効な治療法が保険の適用外なため、一時期より重きをおかれていないというか、スルーされている感じはします。内膜の厚さを気にかける方は以前より減ったように思います。ひとまず内膜の厚さは置いておいて、先に保険内でできる治療を優先しているのが実情かもしれません。

保険適用の範疇で内膜の厚さに関係する治療をするとなると、ビタミンEやビタミンCを服用する、温熱療法や運動療法で血流をよくして改善を促すくらいです。

まれに自費でG-CSF製剤やPFC-FD™を入れる方もいらっしゃいますが、少数です。G-CSF製剤は子宮内膜を厚くする薬剤で、胚移植の2~9日前に1回、子宮内腔に投与します。

PFC-FD™は血小板の力を活用する治療法です。採血した血液から自己組織の修復ができるPFC-FD™を作成し、投与します。胚移植前に1~2回、子宮腔内に注入することで内膜が厚くなります。

とはいえG-CSF製剤もPFC-FD™療法も自費で数万円~数十万円の治療になりますから、こちらとしても患者さんに勧めにくい側面はあります。ただし、子宮内膜を厚くする有効な治療法であるのは事実。もし、内膜がうすいために着床しないというのであれば、有効な治療法として選択肢になるでしょう。

明大前アートクリニック 北村 誠司 先生

経歴

  • 1987年
  • 慶應義塾大学医学部卒業
  • 1987年
  • 慶應義塾大学医学部産婦人科入局
  • 1989年
  • 東京都済生会中央病院に入職、IVFを研修
  • 1990年
  • 慶應義塾大学医学部産婦人科、IVFチームに配属
  • 1993年
  • 荻窪病院に入職、IVFおよび内視鏡手術に従事
  • 2003年
  • 荻窪病院 産婦人科部長に就任
  • 2008年
  • 荻窪病院 虹クリニックを開設
  • 2018年
  • 虹クリニックを退職
  • 2018年
  • 明大前アートクリニックを開設

資格

日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医
母体保護法指定医
日本生殖医学会認定 生殖医療専門医
日本産科婦人科内視鏡学会評議員
日本受精着床学会評議員

ホームページを開く

関連記事

最新記事