不妊治療の先生に聞いてみた

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すべてのカップルに必要ではありませんが、何度、胚移植しても妊娠しない人、子宮内膜が厚くならない人は、PRP治療により妊娠の可能性が高まると考えています。
【杉山産婦人科 新宿 髙見澤聡先生】

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PRP治療で、妊娠率は上がりますか?

PRP(多血小板血漿)治療については、2回以上良好胚移植をしても妊娠が成立しない人、子宮内膜が厚くならない人を対象に行っています。

ただし、着床の窓、子宮内フローラ、慢性子宮内膜炎、難治性着床障害などの検査や、PGT-A(着床前胚染色体異数性検査)などを終えて、それらに問題がなかったことも考慮する必要があると考えています。ですから、すべてのカップルに最初から必要な治療ではありません。そのため実際に治療を受ける人は、それほど多くはありません。

私たち杉山産婦人科では、2019年7月に厚生労働省「再生医療等委員会」より認定され、PRP治療を開始していますが、れまで通院外の人も含めて43人が治療を受けています。このうち治療後の妊娠経過が判っている37人については10人が臨床的妊娠(胎嚢確認)に至っています。割合でいえば、4人に1人以上(27%)がPRP治療の胚移植で妊娠が成立しているわけです。生化学妊娠(妊娠反応陽性)を含めると3人に1人以上(38%)になります。

100%妊娠できるということではありませんが、これまで良好胚胚移植をしても妊娠しなかった人たちや内膜が薄くて移植出来なかった人たちが、PRP治療後の胚移植で妊娠しているわけですから、可能性も期待も高まると考えていいでしょう。

PRPで、子宮内膜は厚くなりますか?

PRP治療は、整形外科や歯科などで多く行われています。自分の血液から抽出したPRPを患部へ注射することで、自己治癒力が高まることから整形外科では関節症、歯科では歯槽骨の再生などに用いられています。

生殖医療では、子宮内膜が厚くならない人の治療として有効だということから導入されはじめています。ただ、どこでも受けられる治療ではなく、厚生労働省から認定を受けた施設しか実施できません。そのため、通院される以外の人がPRP治療だけを受けにくるというケースもあります。

実際に治療を行ってみると、子宮内膜が厚くなる人もいれば、ならない人もいます。一般的には、子宮内膜が7㎜以上あったほうがいいといわれています。これまで6~7㎜に達することなく薄い内膜だった人がPRP治療後には厚くなり、平均では7.2㎜でした。

卵巣へのPRP治療から排卵誘発へ

子宮内膜が厚くならなかった人は、妊娠しなかったのですか?

子宮内膜が厚くならなかった人が妊娠していないかというと、そうではなく妊娠例があります。実際、妊娠した10人中5人の移植時の内膜は7㎜未満で、5㎜台の人も2名いました。そのため、子宮内膜の厚さだけではなく、なにか他の作用から子宮環境が良くなり、着床し妊娠しているのではないかと思います。

PRPは血小板を濃縮したもので、血小板から放出される成長因子等が豊富に含まれていますが、それが子宮内膜に対して、どのように作用しているのか、またどのように着床環境を良くしているのかはわかっていません。

わかっていないのですが、これまでの治療実績からは、いわゆる「難治性」とされる人の妊娠例があります。

治療を受けるカップルの不安や期待はいかがですか?

妊娠のメカニズムは、とても複雑で、まだわからないことも多くあります。

特に着床に関することは、最近、着床の窓や子宮内フローラ、慢性子宮内膜炎と着床環境に関する検査、そして移植胚の染色体の数を調べるPGT-A検査が登場し、以前よりもできる検査、わかることが増えてきました。それでも、まだわからないこともあります。

子宮内膜の厚さについては、さまざまな治療を行っても厚くならない人も中にはいて、それが妊娠を難しくしていると考えられています。しかし、内膜が薄くても妊娠する人もいますし、内膜のない卵管へ胚が着床してしまうこともあります。私たち医師にも、わからないことはあり、それを正直にお話しながら、治療実績として妊娠例があるということをお伝えし治療を進めています。

患者さんたちは、PRP治療を不安に思うというよりは、これまでいろいろな検査や治療をしてきても妊娠しないことのほうが不安で心配なご様子です。

できることがあり、この治療に実績があるなら、「やってみたい」という思いのほうが強いようです。また、自分の血液からPRPを抽出するわけですから、その面では安心ですね。

治療は、どのような方法になりますか?

PRP治療は、胚移植周期に行います。

採血をして、その血液からPRPを抽出します。必要な成分だけを濃縮するので、20‌cc‌の血液からわずか1ccしかとれません。これを採血した日と同日、抽出後すぐに子宮内腔へ移植用カテーテルを使って注入します。特に痛みなどを訴える人もいません。基本的には、移植前に2回行います。その後、ホルモン環境や子宮内膜の厚さなどを確認して移植日を決定し、凍結胚を融解して胚移植をします。移植周期は、原則ホルモン補充周期で行います。

PRP治療後も個人差はありますが、2周期くらいは効果があるようです。

保険が適用されないので、医療費は高額になりますが、何もしないまま良好胚を移植し続けるよりは治療法の1つとして検討してみてはいかがでしょう。

すべてのカップルに必要な治療ではなく、2回以上胚移植をしても妊娠が成立しないカップルにおススメするものです。しかし、もともと子宮内膜が厚くなりにくい人は、早めに検討されてもいいかと思いますし、もちろんご希望があれば、早めの施行も選択肢に入れていいかと思います。

PRP治療を受けたカップルについては、特に高年齢の人が多いということもありません。さまざまな検査や治療を行った上で、それでも妊娠しないという人、子宮内膜が厚くならない人は、PRP治療という方法があることを知っていて欲しいと思います。

生殖医療分野でのPRP治療はまだ新しいものですが、この治療で妊娠し、無事に出産されたとの報告もすでにいただいています。

杉山産婦人科 新宿 髙見澤聡 副院長

専門医

医学博士
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
日本生殖医学会認定生殖医療専門医

経歴

自治医科大学卒

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