公開日
今まで見えなかった胚の様子を確認できるから
治療の納得度と安心感を高められる
【オーク住吉産婦人科
オーク梅田レディースクリニック
オーク銀座レディースクリニック
田口 早桐 先生】
ダメージを与えることなく
時間・胚を観察できる
タイムラプスインキュベーターとは受精卵(胚)の分割状況を映像で確認できる機能のついた胚培養器です。タイムラプス導入前も胚の分割状況を定期的に目視で確認していましたが、培養士が24時間ずっと張り付いて確認していたわけではありません。タイムラプスを使用すればまさに四六時中、胚の様子を確認できるのです。
とはいえ、タイムラプスを使用したからといって妊娠率が上がるわけではありません。胚盤胞への到達率がアップするわけでもありません。結局のところ、胚盤胞になるかならないかは胚の力であって、タイムラプスを使っても使わなくても治療成績は同じです。
ただし、胚を出し入れせずに分割状況を確認できるので胚への侵襲が少ないであるとか、今まで見逃すこともあった受精の確認ができるといった点で便利です。タイムラプスを使う前は「受精のタイミングが合わなかっただけ」というように、曖昧に捉えていたところを、映像で確認できるようになったのが大きな利点だと思います。
これまで説明に頼っていた部分を可視化
ウソやごまかしのない事実を確認できる
タイムラプスインキュベーターを使っても使わなくても私たち医師や培養士が行なっていることは基本同じです。何も変わっていません。妊娠率アップにも結びつきません。とすれば、タイムラプスを使用することで患者様が得られるメリットは何なのでしょうか?それは安心感や納得度だと思います。
タイムラプスの使用によって以前は確認できなかった胚の分割状況を映像で確認できるようになった。不妊治療の見えない部分が一部見えるようになったという点で患者様の安心につながっていると感じます。
もちろん、タイムラプス導入前も診察時に分割の状況を説明していましたが、タイムラプスを使用すると映像で確認できます。以前だったら「3日目で分割が止まってしまいました」と医師が説明するだけだったのが、実際に分割が止まってしまった胚の映像を確認できるわけです。同じ状況を説明するにしても映像があると患者様の納得度が違います。今までも正確に状況をお伝えしていましたが、映像が伴うことによってウソやごまかしが無いことを確認できるとも言えるでしょう。胚培養といっても医師が魔法の粉を振りかけているわけではありません。胚を培養器に入れて培養しているだけなんです。
受精や胚など患者様にとっては見えない世界、未知の領域とも言えますが、タイムラプスの映像で確認すれば一目瞭然です。こうやって今まで見えなかった部分が可視化されたのは良いことだと思います。隠していたわけではありませんが、これまでシステム的に見えなかった部分が見えるようになったことによってシークレットな部分が無くなったとも言えます。
現在のところ院内でしかタイムラプスの映像を確認できませんが、将来的には患者様自身がご自分の胚の状況をリアルタイムで確認できるようになると思います。そうなれば、受精のサインが出る瞬間や分割の瞬間を確認することも可能です。
自由診療の微調整にも役立てられる
結果として妊娠につながるケースも
繰返しになりますが、タイムラプスインキュベーターを使ったからといって妊娠率アップに結びつくことはありません。ただし、治療のプランニングに活用することは可能です。たとえば「分割が全部3日目で止まってしまったので、次回は自然胚を移植しましょう」といった判断材料として利用できます。
実際に胚盤胞で移植する予定だけれど、3日目の段階で分割の速度が明らかに遅いから「早めに移植したい」とか「早めに凍結してほしい」といったご要望を患者様からいただくこともあります。胚については待ったがききません。その都度、その都度、判断していかないと間に合いません。ですから、患者様に胚の状況を電話連絡して、培養途中で予定変更することもあります。
タイムラプスを使用することで、こうした治療の微調整がよりしやすくなったとも言えるでしょう。ただし、これは自由診療の場合です。保険診療の場合はある程度、決まった治療過程を進むので、こうした微調整をするのは難しいです。
自由診療の患者様でも治療期間が長くなっている方には特に有効な方法とも言えます。不妊治療では漫然と同じ方法を続けるよりも、可能性を模索していろいろな方法を試してみるのもひとつの方法です。その時にタイムラプスで得られた情報を参考にして、「次は胚盤胞になるのを待たずに早めに移植する」といった工夫をしてみる。こうやって別の方法を試すことで妊娠につながるケースもあります。
オーク住吉産婦人科
田口 早桐 先生
経歴
川崎医科大学卒業、兵庫医科大学大学院卒。専門は「抗精子抗体による不妊」。
学位論文はIdentification and Characterization of a sperm Peptide Antigen Recognized By a Monoclonal Antisperm Autoantibody Derived from a Vasectomized Mouse.(掲載誌 Biochemical and Biophysical Research Communications.)
府中病院を経て、医療法人オーク会勤務。
体外受精に関して、排卵誘発法を含めた治療戦略をしっかり立てることが大事との信念で、個人個人の状態に合わせた方針を決めることに力を注ぐ。
資格
日本生殖医学会認定生殖医療専門医
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
母体保護法指定医
臨床遺伝専門医制度委員会臨床遺伝専門医
日本再生医療学会会員