不妊治療の先生に聞いてみた

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保険診療でも技術差はあります。最善な方法で治療をおこないます!
【おおのたウィメンズクリニック埼玉大宮 大野田 晋 先生】

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2022年5月不妊治療元年に誕生した医院

保険適応で不妊治療が受けられるようになった令和4年(2022年)4月。金銭的な問題で、これまで不妊治療をあきらめてしまっていた患者さんの多くが、治療を受けられるようになり、不妊治療のあり方が大きく変わった年でもありました。同年5月に開院したおおのたウィメンズクリニックは、そんな変化に合わせた保険診療をメインとする不妊治療の医院です。

東京ではなく、あえて大宮に開院したのも、都心から離れた方が1人でも多く地元で治療が受けられるようになることを願ってのことでした。

柔らかい口調で丁寧に話される院長の大野田晋先生。開院わずか1年半で多くの患者さんから信頼を集め、好調に治療成績を伸ばしている理由を早速うかがってみましょう。

開院した経緯は、埼玉で質の高い診療をしたいという思い

私は、東京の学校を卒業して長年都内で働いたのち、埼玉の大学病院に派遣されて6年間勤務していました。その病院には、当初はまだ一般の産婦人科しかなく、患者さんが不妊治療を受けるためには東京に通院するのが当たり前でした。心身ともに負担が大きい患者さんが、わざわざ東京に通院しているのを長い間見てきたため、埼玉で東京の高いクオリティーを維持した医院を開きたいと考えたのが、開院に至った理由です。

最近では、インターネットで病院を探す人も多いですが、「不妊治療 病院」と検索してみると、東京の病院ばかりが表示されます。東京には高い技術とクオリティー、そして素晴らしい設備が整った不妊治療専門施設が数多くあるため、患者さんも「都内なら安心」と感じるのかもしれません。

でも、実際の不妊治療は長期的になることも多く、患者さんにとって費用や時間、労力などのストレスが継続してかかることになってしまいます。だからこそ、保険診療をメインにした通いやすい医院をつくり、〝都内なら〟ではなく、〝ここなら〟安心できると思っていただける医院を目指しました。

また、地域に特化した医院にすることで、妊娠が成立した際に患者さんが望む産婦人科や地域の先生をご紹介したり、連携を取りやすくなったりするため、より安心していただけるのではないかと思っています。

診療方針は、患者さんの負担を軽減した治療で、最後に赤ちゃんを抱っこしてもらうこと

当院では、患者さんの負担を軽減しながら1人でも多くの患者さんに、治療の最後には赤ちゃんを抱っこしていただきたいという思いが、何よりも大きな診療方針の軸になっています。

そこで私が考えた最善策は、開院の理由でもお話したように、保険診療内でできる治療を高いクオリティーで行うことでした。

保険診療の治療とは、一般不妊治療のタイミング療法や人工授精、そして体外受精を含む、いわゆる不妊治療の基本となるものを指します。

それに対し、現在も研究段階にある、新しい治療法として、PICSI法やER Peak法などの先進医療があります。

これまで不妊治療といえば、保険が適応されていなかったため、患者さんは費用面でも大きなリスクを負っていました。でも、2022年の4月以降、一部の検査や先進医療を除いた体外受精までが保険適用になったことで、経済的負担が軽減されたのです。

実際、ドクターや病院によって、診療方針が大きく異なるのが不妊治療だと思います。それぞれの方針がある中、当院では保険が適用される治療に特化し、一定に決められた保険診療の中で個々の患者さんを丁寧に診ることで、治療のクオリティーを高めることを追求しています。

もちろん、医学の進歩や最新の研究もとても重要だと考えています。ただ、収入などと関係なく保険適用で治療が受けられるようになったことで、多くの患者さんが不妊治療に挑戦できるようになりました。そんな今だからこそ、原点回帰して「基本的な治療のクオリティーを高める」ことこそが、患者さんの負担やリスクを軽減し、最短で妊娠へ繋げられる方法だと考えています。

妊娠率が好調のようですが、何か特別な取り組みを?

開院して1年半ほど経ちましたが、幸運なことに多くの患者さんが赤ちゃんを抱くことができて、スタッフ一同、本当にうれしく思っています。もちろん患者さんが頑張られたことが、妊娠につながる一番大きな要因だと思っています。

それ以外の理由があるとすれば、やはり保険適用の治療に専念し、そこに高いクオリティーを求めたからではないでしょうか。

保険適用で同じ治療をおこなえば「どこの医院でも同じ結果が得られるのでしょう?」とお考えの患者さんが多いのですが、残念ながらそれは違います。

例えば、歯科医次第で歯の治りが早かったり、治療中の痛みが異なったりしますよね。また、外科医次第で傷口がキレイだったり、治療の過程が異なったりすることも多々あります。同じ保険適用の治療科目でも、医師の考えやスキルによって異なる結果が生じるのです。

不妊治療も医師や培養士、看護師やその他多くのスタッフのスキルが結果を左右するといっても過言ではありません。保険内で結果を出そうとするには、やはりスキルが重要だと考えています。特に当院は大きな大学病院とは異なりスタッフの人数にも限りがあるため、積極的に新しい先進医療を取り入れることは懸命な選択肢とは考えていません。そのかわり、当院の方針とスタッフ個人の認識を一致させ、保険診療内で最善の結果を出すことにフォーカスしたのです。

このような経緯もあり、開院時には私が最も信頼できる培養士や看護師に声をかけ、今のチームスタッフを集められたことも、患者さんに良い結果をお届けできている理由だと思います。

保険診療と自由診療の頻度診療で工夫されていることは?

基本的に患者さんのコンディションなどの影響で、一般治療での妊娠が難しいと判断した場合以外、保険適用外の治療はおこなっていません。検査も、まずは基本的なものを用いて診断しており、初診の患者さんは100%保険のみで治療をスタートしています。

そうは言っても不妊治療は複雑で種類も多いため、患者さんには説明用の資料などもご用意しています。まずはそうした資料などを読んでいただき、ご質問にお答えしながら、患者さんのライフスタイルなどに合わせた不妊治療を進めていくようにしています。

アクセスが便利で標準的な治療のクオリティーを高めたマルチな医院が当院の目標でもありますので、そのため、一般的には行われていない不妊治療に関わる婦人科の治療なども積極的におこなっています。

培養室で心掛けていることはありますか?

培養室は、環境的な面でいえば、これまでもこれからも、いつも最善の環境を作れるよう取り組んでいます。また、培養士が培養業務だけをおこなうのでなく、患者さんへの説明などもおこなっています

実際に患者さんの大事な卵子や精子、胚などを扱っているのは培養士ですから信頼も強まります。もちろん医師として私からも説明はさせていただいていますが、培養士からの話も直接お聞きになることで、より患者さんにも安心していただけるのではないかと思っています。

患者さんの大事な卵子や精子、胚を扱う上で特に気をつけていることはありますか?

不妊治療の根本を見つめなおすという意味でも、とにかく何度も「確認」をおこなうようにしています。

卵子や精子などの取り違えはなかなか起こるものではないと思われがちですが、事故が起こらないようにするためには、本当に細心の注意を払わなければいけません。患者さんを受付で対応してから、診察し、卵子や精子をお預かりしてから培養し、胚を移植するに至るまで、一般的に病院のバックヤードではとても多くのスタッフが関わっています。だからこそ、何度も何度もお名前やIDを確認し、常に注意しなければいけません。万が一でも間違いが起こってはいけない現場ですから…。

私が開院する前に先輩の開業医が、「万が一、卵子や精子、胚の取り違いが起こってしまったときには、病院を畳んで赤ちゃんを育てるよ」とおっしゃっていたのを、今でも思い出します。実際、病院内でそのようなことが起こっても、なかなかすぐにはわかりません。だからこそ、私もそれだけの覚悟を持って命をお預かりしなければならないと思っています。

当院は特に少数精鋭のため、常に注意を払うだけではなく、合理的なシステムとして、取り違えを未然に防止してくれるRI Witnessを採用しています。また、一般的に胚を育てるラボでしか使われていないようなシステムを人工授精の場面でも用いて、何重もの確認をおこなっています。スタッフが扱いやすいシステムや機材は積極的に用いて、間違いが起こらない現場づくりを意識しています。

患者さんへのアドバイス、お伝えしたいこと

実際にこうして毎日患者さんとお会いしていると、中には「もしかしたら妊娠は難しいかもしれない…」という方もいます。その方たちにとって、赤ちゃんを抱きたいという思いが強いことがわかるからこそ、私たちもそれを叶えられない場合や、負担が大きくなる治療はとても心苦しくなります。

不妊治療では年齢が大きく関係していて、年齢を重ねるごとに、生物学的に妊娠しづらくなってしまいます。だからこそ、「もしかしたら…」と不安を感じたら、少しでも早く病院で診察を受けられることをお勧めします。

それと同時に、その時に受けられる不妊治療や検査が、どこの病院でも同じというわけではないことも知っておきましょう。例えば、先進医療をどんどん取り入れているところ、できるだけ自然な形で妊娠できるよう取り組んでいるところ。当院のように保険診療をメインとしているところなどのように、医師によって考え方もさまざまです。

ですから患者さんにはまず、不妊治療にはどんなものがあるのか、保険適応や適用外の治療の違いは何なのか、どのようなリスクがあるのか、などをしっかり把握していただきたいと考えています。病院それぞれの特色や治療の特徴を理解することが、自分自身にあった最善の不妊治療につながるのです。

当院では、不妊治療が保険適用となったからこそ、保険内でできる治療の技術力を可能な限り高め、私をはじめ胚培養士、看護師と一緒に、患者さんが安心して受けられる治療をおこなっています。

おおのたウィメンズクリニック埼玉大宮
大野田 晋 先生

経歴

東京慈恵会医科大学 医学部医学科 卒業
東京慈恵会医科大学附属 柏病院
東京慈恵会医科大学附属病院
国立成育医療研究センター 周産期・母性診療センター
茅ケ崎市立病院 産婦人科
東京慈恵会医科大学付属 第三病院
獨協医科大学埼玉医療センター リプロダクションセンター、産婦人科、遺伝カウンセリングセンター
みなとみらい夢クリニック
おおのたウィメンズクリニック埼玉大宮    開院 院長

資格

日本専門医機構 認定産婦人科専門医
日本生殖医学会 認定生殖医療専門医

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