不妊治療の先生に聞いてみた

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EMMAは、不妊治療時に子宮内環境を調べ、着床不全や反復不成功者などの妊娠率を高める大事な検査です。
【神谷レディースクリニック 岩見奈々子先生】

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子宮内環境の大切さをある患者様に出会い、気づかされたことが本検査に着目するきっかけでした。

その患者様は、海外在住の間にARTにて移植胚の着床前検査を行い染色体正常の胚を3回移植しても着床せず帰国のタイミングとなって、当院での不妊治療をご希望され受診となりました。

子宮鏡や腟培養検査では異常を認めなかったのですが、子宮内マイクロバイオーム検査を行ったところ、子宮内には善玉菌といわれているラクトバチルスが5%未満しか存在せず、ガードネレラ菌という悪玉菌が90%を占めている状態でした。

この状態を抗菌薬とプロバイオティクス治療により改善し移植を行ったところ、初めて子宮内への着床が得られました。

これ以降、子宮内環境にラクトバチルスが存在することの大切さを感じ、着床不全の患者様の子宮内環境に注目するようになりました。

EMMA検査で子宮内環境をチェック

長い間子宮内は無菌と考えられていましたが、検査技術の向上により、子宮内にも常在菌が存在することがわかってきました。

子宮内に存在する細菌は菌量がとても少ないため、培養検査では正しく検査することができず、細菌のDNAを抽出して子宮内の環境をチェックすることができる検査がアイジェノミクス社の提供しているEMMA検査です。

この検査の良いところは最新の次世代シーケンシング技術を用いて子宮内膜細菌叢の分析を行い、培養可能な菌も培養不可能な細菌も検出でき、子宮腔全体の細菌のバランスがわかります。

その内容は

  • 子宮内膜におけるラクトバチルス菌の割合(ラクトバチルスは子宮内や腟内に存在する乳酸桿菌で善玉菌と言われており、割合が多い方の妊娠率が高いといわれています。)
  • 善玉菌の発育を妨げると言われている悪玉菌の種類と割合
  • 上記から子宮内細菌叢が正常か異常か、菌の共生バランスの失調があるかどうか
  • 悪玉菌の種類や存在割合により適切な抗菌薬の提案とプロバイオティクス治療の必要性について

ALICE検査がセットでできる

ALICE検査は、慢性子宮内膜炎の原因となる10種類の特定の細菌を検出し、菌が存在した場合には慢性子宮内膜炎を発症している又は今後発症するリスクが高いことがわかります。

EMMA検査と同時に検査できる点がメリットであり、この二つの検査結果の組み合わせから、抗生剤治療についても膨大なデータを参考に推奨されますので、患者様への個別治療が可能となります。

EMMA/ALICE検査の推奨治療

腸内フローラの環境調整にはラクトフェリンなどのサプリメントも話題になっておりますが、 腟内環境を内服で整えるようとすると長期間の治療が必要となったり、腸からの吸収が不良の場合には内服では改善が得られなかったりすることが多いのです。

アイジェノミクス社の推奨治療であるプロバイオティクス治療は腟内へのラクトバチルス菌の投与を提案しています。

腟内製剤はアジアで入手できるものをレポートに記載しておりますので、検査を行っている施設であれば入手可能と思われます。

今後のビジョン/期待されること

受精卵の染色体が正常であっても着床率は70%前後といわれており、着床には胚の染色体以外の要因も関連しているといわれています。

その一つである子宮内環境と慢性子宮内膜炎の関係について検査ができるようになったことは、これまで良い結果が得られず悩んでいらっしゃった患者様の治療の一助になる可能性が期待されます。

また、過去に慢性子宮内膜炎や子宮内の炎症を是正するために広域の強力な抗菌剤が長期間投与され続けてきましたが、これにより善玉菌であるラクトバチルスが減少してしまうリスクも伴います。

本検査により目的菌に照準を限定した治療を行うことができますので、耐性菌の蔓延予防にもつながり、またプロバイオティクス治療のみで環境の改善が得られる患者様には不要な抗菌薬の投与を避けることができます。

このような点から、当院では着床不全や反復流産の患者様にEMMA/ALICE検査をご提案しています。

着床の窓を診るERA、そして子宮内環境をEMMA/ALICEで整えることで妊娠のチャンスが広がることを期待しています。

神谷レディースクリニック 岩見奈々子先生

専門医

日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医
日本生殖医学会生殖医療専門医
日本抗加齢医学会抗加齢専門医

経歴

2005年3月 札幌医科大学卒業
2005年4月 初期研修医として札幌社会保険総合病院(現:札幌北辰病院)、札幌医科大学附属病院に勤務
2007年5月 板橋中央総合病院にて産婦人科後期研修医
2009年7月 札幌医科大学附属病院産婦人科
2011年10月 レディースクリニックぬまのはた勤務
2013年4月 とまこまいレディースクリニック勤務
2014年6月 神谷レディースクリニックに勤務中

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