不妊治療の先生に聞いてみた

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高濃度ヒアルロン酸含有胚移植用培養液で
妊娠率向上に期待!(2)
【杉山産婦人科 新宿 中川浩次先生】

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グレードの低い胚については、いかがでしょうか?

グレードが低い胚盤胞は、グレードの良い胚に比べて、妊娠率が低いことが知られています。

胚盤胞は、ガードナー分類でグレードを評価し、胚盤胞腔の広がり、内部細胞塊(ICM:将来赤ちゃんになる細胞)や栄養外胚葉(TE:将来胎盤になる細胞)の細胞数の多さをA、B、Cに分けて評価していきます。胚盤胞腔の広がりが大きく、ICMやTEの細胞数が多い胚盤胞はグレードが高く、妊娠率も高いことが知られています。

私たち杉山産婦人科では、グレードの低い胚に対して高濃度ヒアルロン酸含有移植培養液を用いた胚移植において妊娠例が多い事にも注目しています。

そのため、杉山産婦人科ではグレードの低い胚しかない場合、高濃度ヒアルロン酸含有胚移植用培養液を積極的におすすめしています。

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高濃度ヒアルロン酸含有培養液の役割とは?

ヒアルロン酸は、ペタペタした性状で、着床時期には子宮内膜と胚盤胞の表面に現れます。ヒアルロン酸は、糊のような役割をしているから、特にグレードの低い胚は、ヒアルロン酸の量を補ってあげれば、着床しやすくなるのだろうと考えていました。しかし、ヒアルロン酸の量というよりも、胚と子宮内膜にあるループとフックの関係がポイントだったのです。

子宮内膜にはループがあり、胚にはフックがあります。フックの数が少ない胚は、子宮内膜のループに引っ掛からず、着床しづらくなり、フックの数がが多い胚は、ループに引っ掛かりやすいので着床しやすいというイメージです。このループとフックはCD44というレセプター(受容体:刺激を受け取るタンパク質)で、細胞に存在します。

このフックの少ない胚がグレードの低い胚にあたり、特にTEの評価が低い胚はTEの数が少ないことから、フックの数も少ないと考えられます。フックが少なければ、引っ掛かりにくくなり、それが着床を難しくさせているのでしょう。

ヒアルロン酸には、フックの数を増やす効果はありませんが、フックの数が少なくても引っ掛かりやすくサポートしてくれることが期待できます。このサポートには、ヒアルロン酸が高濃度に含まれている培養液が有用だと考えています。

子宮内膜のヒアルロン酸量の変化

ヒアルロン酸は、高濃度のほうがいいのでしょうか?

ヒアルロン酸の濃度が高ければ粘稠性が高いので、胚のフックの数が少なくても子宮のループに引っ掛かりやすくなるのだと考えられます。

ヒアルロン酸を含んでいると称している培養液(胚移植用や培養用)は、さまざまなメーカーから発売されていますが、その濃度はメーカーによって違いがあります。濃度が公表されている培養液もあれば、公表されていない培養液もあります。

どのヒアルロン酸含有培養液を使って胚移植をしているかは、治療施設によって違いがありますが、「高濃度」と表記されている培養液は限られています。

やはりヒアルロン酸が高濃度に含まれている培養液のほうが成績が良いことは、さまざまな論文や学会発表からもわかってきていますので、ヒアルロン酸が高濃度に含まれていてなおかつ様々な論文や学会発表で実績が示されている培養液を使うべきと考え、私たち杉山産婦人科でもそのようにしています。

保険診療による体外受精には、年齢と胚移植の回数制限がありますが、やっと保険が適用になったわけですから、有効な治療を提供し、ひと組でも多くのカップルに赤ちゃんが授かるようにと思い、日々、努めています。

子宮内膜のヒアルロン酸量の変化

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杉山産婦人科 新宿 中川浩次先生

専門医、所属学会

医学博士
日本専門医機構 認定産婦人科専門医
日本生殖医学会 認定生殖医療専門医

経歴

1990年、自治医科大学を卒業。
徳島大学医学部産婦人科で体外受精の臨床・研究を重ね、愛媛県立中央病院、国立成育医療センターを経て、2008年より杉山産婦人科生殖医療科に勤務。
体外受精反復不成功例や習慣流産・不育症症例に対して、独自のアイディアで対策を講じ、数多くの成果を公表している。2018年1月より現職となる。

協賛:ヴィトロライフ(株)

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