不妊治療の先生に聞いてみた

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あなたの月経は大丈夫ですか?
周期は?量は?以前と比べて変化は?
【佐久平エンゼルクリニック 政井 哲兵 先生】

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女性は、長い年月、月経と付き合って生きていきます。

独身時代は、月経が毎月あることがうっとうしかったり、また急に来なくなったことに焦ったりしたことがある人もいるでしょう。そして、妊活をはじめてからは月経が来ることがつらかったり、悲しかったりするのではないでしょうか。

ずっと付き合ってきた月経ですが、人と比べようがないことなどもあり「私、大丈夫なのかな?」が実はよくわからないと話す人もいます。

今回は、妊活の基本中の基本、月経について佐久平エンゼルクリックの政井哲兵先生にお話をお聞きしました。

【排卵】があるから【月経】がある

月経は、基本的に排卵があるから、月経があります。

なかには、無排卵なのに月経がある人もいますが、そもそもそれを月経と呼べるのかという問題もあります。

「毎月出血があるから、排卵があると思ってた」と話す患者さんもいますが、よく聞くと月経周期が短かったり、長かったりと不安定だったり、月経の出血期間がバラバラだったりします。

また、基礎体温が低温相と高温相に二相性に分かれないなどの特徴も見られます。

原因としては、高プロラクチン血症や多嚢胞生卵巣症候群などの病気、体重が急に増えたり、減ったり、または太り過ぎ、やせ過ぎ、そのほかにストレスなどが関係していることもあります。

自覚することはなかなか難しいのですが、月経周期が短すぎたり、長すぎたり、月経周期以外にも出血があったり、基礎体温が一相性などの場合は、無排卵月経かもしれません。

赤ちゃんがほしいと思いはじめたら、これらの症状を放っておいてはよくありません。早めに産婦人科へ相談しましょう。

無排卵月経とは
排卵がないのに月経が来る状態のこと
・月経周期が正常範囲より短い
・月経周期がが正常範囲より長い
・太り過ぎややせ過ぎ
・過剰なストレス
・高プロラクチン血症や多嚢胞生卵巣症候群などの病気がある

【排卵までの日数】と月経周期の関係

月経周期の正常範囲は25〜38日だとされています。

月経が順調にある人は、だいたい28日型とか30日型など、おおよそ同じ日数に来ることが多いのですが、正常範囲内であれば、毎周期同じ日数でなくても±6日の範囲であれば、あまり心配することはありません。

また月経周期の長さは、排卵までにかかった日数で決まることが多くあります。なぜなら、排卵後の卵胞が黄体化し、黄体ホルモンを分泌するようになりますが、この黄体の寿命は、どなたもだいたい14日だからです。黄体ホルモンは、子宮の着床環境を整えるために働きますが、妊娠すると、黄体は妊娠初期を支えるために妊娠黄体となり、ますます盛んに黄体ホルモンを分泌します。しかし、妊娠しなかった場合、黄体はその役目を終え、黄体によって支えられていた子宮内膜は剥がれ、血液と一緒に体外に排出されます。これが月経です。月経の出血があった日が、新しい月経周期の始まりの日になるので、その前日から遡ってだいたい14日目頃に排卵があったことがわかります。

逆算して、月経周期1日目からその日までかかった日数が排卵までの日数ということになります。

排卵までに日数のかかった周期は月経周期が長くなり、日数がかからなかった周期は月経周期が短くなる傾向があります。たとえば、そうした周期が年に数回あっても、特に心配はありません。ときどきは、そうした周期が訪れることもあります。しかし、毎周期、排卵までに日数がかかるような場合、男性ホルモンが優位になっていたり、プロラクチンというホルモンが多く分泌されているからかもしれません。また、排卵までに時間がかかると、卵子の質が良くない場合もあります。

短くなるのは、FSH(卵胞刺激ホルモン)が高いからかもしれません。FSHは、卵胞を育てるホルモンですが、そのホルモンの基礎値が高いと、月経周期が始まる前から次の月経周期で排卵される卵胞に働きかけ、発育を始めます。

新しく始まった月経周期のスタート時には、ある程度の大きさに育っているため、排卵までの期間が短くなることがあります。卵胞は約20mmを超えると排卵に向けて準備をし、卵胞の成熟と排卵の引き金を引くLH(黄体刺激ホルモン)が一過性に大量分泌されます。これによって排卵が起こります。もしくは、前周期に排卵に至らなかった卵胞が卵巣に残ることがあります。これを黄体化未破裂卵胞(LUF)といいます。黄体化未破裂卵胞は、その周期内に消失する場合が多いのですが、翌周期まで持ち越してしまうこともあり、未破裂卵胞が、新しい月経周期に排卵される卵胞よりも先に発育し、新しい月経周期を乱すことがあります。これも、誰にでも起こることがありますが、次の月経周期には解消されていることが多いのですが、これを繰り返す人もいます。

月経周期が長い、または短い周期がたびたび起こる場合は、排卵に問題を抱えていることも少なくありません。早めにホルモン検査やエコー検査などを受けて排卵の様子を知りましょう。

【月経周期の変化】はない?

月経がある間は、排卵があるのだから妊娠できると考えている人は少なくありません。

基本的に排卵があるから月経があるのですが、卵巣に残されている卵胞の数が少なくなれば月経周期にも変化が現れます。

その多くは、月経周期が短くなることから始まる人が多くいます。閉経の平均年齢は50歳くらいですが、その10年くらい前から卵子の質の低下が顕著になり、また卵巣機能も低下することから排卵に問題を抱える人も増えてきます。体外受精治療周期でも、排卵誘発剤の効果が低かったり、思うように卵胞が発育しなかったり、卵子が採取できて受精しても胚が順調に発育しなかったり、なかなか着床しなかったりするケースが増え、妊娠が難しくなり、流産が増えることが知られています。そのため月経、排卵があっても妊娠が難しくなっていくのです。

卵子の質の低下や卵巣機能低下は年齢とともに起こりますが、個人差もあります。ですから同じ40歳でも比較的卵子の質が保たれている人もいますが、年齢以上に低下している人もいます。これと同様に卵巣機能の低下にも個人差があります。ただ、どちらも自分の外見や体力などから推し量ることができませんが、その一端が月経周期から予測することができます。

以前と比べて月経周期が短くなっている場合は、卵巣機能低下が一因しているかもしれません。赤ちゃんがほしいと考えているのに、昨年と比べて、一昨年と比べて、月経周期が短くなっているようであれば妊娠を急いだ方いいでしょう。もし、まだ検査をしていないようでしたら、なるべく早く不妊治療専門施設を受診し、専門医に相談をしましょう。

【月経痛に変化】はない?

月経困難症や月経前緊張症(PMS)などで辛い思いをしている人もいるでしょう。毎月のことなので、月経はうんざりと考えるかもしれません。

月経困難症は、強い下腹部痛や腰痛などの痛みの症状のほか、頭痛や疲労感、イライラなどの症状を併せ持つことがあります。月経前緊張症は、月経前の3~10日の間、頭痛、腰痛、下腹痛、むくみ、体重増加、便秘、下痢などの身体症状や、イライラ、めまい、うつ状態、無気力、食欲不振、集中力低下などの精神的、身体的症状が続き、月経開始とともに軽快したり、症状がなくなったりします。ホルモンのバランスなどが要因となっているケースもあり、婦人科へ受診とすると症状に合わせて薬が処方されるでしょう。

月経困難症は、子宮内膜から産出されるプロスタグランジンが必要以上につくられ、それが子宮を収縮させて起こることがあります。しかし、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症が原因となって起こることもあります。子宮筋腫は、子宮の筋層にできる良質の腫瘍ですが、この発生部位や大きによっては着床の妨げになったり、赤ちゃんの発育を邪魔したりします。子宮内膜症は、子宮内膜様の組織が子宮外にでき、月経周期とともにそこで増殖したり、剥がれたりします。子宮内膜は月経の出血とともに体外に排出されますが、子宮外にできた内膜様の組織は体外に排出されることができないので、剥がれたものが他の臓器との癒着の原因になります。子宮腺筋症は、子宮内膜様の組織が子宮の筋層内にでき、そこで増殖します。子宮全体または筋層の一部が厚くなることが多くあります。これらの病気が原因となって月経痛を引き起こすこともあるため、以前と比べて月経痛がひどくなったり、月経の出血量が増えたり、レバー状の塊が出ることがあ流場合は、早めに婦人科で検診を受けましょう。

佐久平エンゼルクリニック 政井哲兵 先生

専門医

日本生殖医学会認定生殖医療専門医
日本産科婦人科学会認定産婦人科専門医

経歴

  • 1997年
  • 鹿児島ラ・サール高校卒業
  • 2003年
  • 鹿児島大学医学部卒業
  • 2003年
  • 東京都立府中病院(現東京都立多摩総合医療センター)研修医
  • 2005年
  • 東京都立府中病院(現東京都立多摩総合医療センター)産婦人科
  • 2007年
  • 日本赤十字社医療センター産婦人科
  • 2012年
  • 高崎ARTクリニック
  • 2014年
  • 佐久平エンゼルクリニック開設(2016年法人化)

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